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高齢者こそお洒落を 「人に見せたくなる服や持ち物」が外出を促進

 先日、兵庫県内で「介護」と「カワイイ」を融合させるイベントが開催されました。発起人は10年以上家族の介護をしている現役の女性ケアラー。「『介護されている・している』を理由に、お洒落や身だしなみに気を使わない人が多いのは残念。『カワイイ』の概念が加われば、介護のイメージは大きく変わります」と語ります。

 例えば、本来は視力をカバーする器具である眼鏡は、今ではファッションアイテムとしての地位を確立しました。人に積極的に見せることはもちろん、服やバッグと同様にTPOなどに応じて使い分ける人も少なくありません。

 それに対して、聴力をカバーする器具である補聴器はファッション性とは全く無縁なのが現状です。「使用していることを知られたくない」という人も少なくありません。本当は補聴器が必要なのに「恥ずかしい」などの理由で使用しない人もいます。
その結果として他者との会話が減り、脳が刺激を受けなくなったことで認知症が進行してしまうケースも少なくないそうです。
 
 今回のイベントには、既製品の補聴器に装飾を施し、ファッションアイテムのように仕上げる会社がブース出展していました。「『人に見せたくなる補聴器』であれば、外出や会話の機会も増えるでしょう」と担当者は語ります。「カワイイ」が介護予防や認知症予防につながると言えそうです。

 以前に取材したことがある杖のメーカーも全く同様のことを言っていました。事故や病気が原因で杖が必要になった若い女性の中には「デザインが地味なものばかりで、杖を持ちたくない」という人が少なくないそうです。そこで、このメーカーでは人気キャラクターがデザインされたものなど「持って楽しくなる、人に見せたくなる杖」を多数開発しています。

このメーカーの顧客の中には40本もの杖を保有し、服装や外出先によって使い分けている人もいるとか。
 

あるメーカーは、お洒落な介護用エプロンを開発しました。一般的なエプロンを着用して飲食店での食事は違和感があります(ドレスコードがあるような店では断られる可能性もあります)。新たに開発したエプロンは普通のシャツのような襟があり、上からジャケットやカーディガンを羽織れば、エプロンとは全くわかりません。咀嚼や嚥下の能力が衰えた人でも気遅れすることなく外食を楽しむことができます。
 
 車椅子・歩行器(シルバーカー)なども既製品の多くは機能性などが最重要視されており、オシャレ・デザイン性は二の次となっていました。介護サービス利用者の7割が女性と言われています。ケアラーも多くは女性です(本来はもっと男性も関わらなくてはいけないのでしょうが)。「お洒落」「カワイイ」が嫌いな女性はいないでしょう。介護にかかわる商品やアイテムにもっとデザインの概念が加わることで、自身や家族の介護の問題に対してもっと前向きに関われる人も増えてくるのではないでしょうか。
 

「今日はデイサービスに行きたくない」という高齢者に対しては、「行くと楽しい」「仲良しの○○さんに会える」などと声掛けをし、利用を促すことが多いかと思います。しかし、行きたくない理由は「楽しくない」からではなく、「この服装や髪型では外出したくない」かもしれません。

 以前、視察をしたスウェーデンの高齢者住宅では女性入居者がピンヒールの靴を履いていました。フィンランドのデイサービスではネクタイにジャケット姿の男性利用者がいました。この男性に「お洒落ですね」と声をかけると「レディとお茶をする場なのに、失礼な格好はできないだろ?」となんともダンディなセリフが返ってきました。
 「高齢者=お洒落に興味がない」という認識から改めたいものです。
 

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