医師の多忙さをネタにしたSNS動画 果たして医療業界のためになっているのか?
先日、現役医師として病院で勤務しながら、お笑い芸人としても活動している方にインタビューする機会がありました。
ステージのほかに各種SNSでも活動していますが、現役医師だけあって、SNSで披露するネタも医療をテーマにしたものが大半です。
SNSでネタを発信する場合に心がけているのが「ネガティブな表現をしない」ということだそうです。
SNS動画の中には、医療・介護関係者(元職の人もいると思われます)が、業界の裏話などを紹介しているものも少なくありません。
確かに、現役や元医療・介護職からは「あ~その話、わかるわかる~」と共感を得られますから、閲覧数やフォロワーを増やすのにはもってこいなのでしょう。
しかし不特定多数の人が自由に見ることができるSNSでそうした話をすることは、果たして業界のメリットになっているのでしょうか?
以前もあるSNSのショート動画で、医師の設定の人(本当の医師かどうかは知りませんが、医療系のネタを数多くアップしている人です)が「勤務医あるある」の話をしていました。
その中に「多忙過ぎて、昼食にカップラーメンを食べている時間もない」「当直明けの勤務は意識も朦朧とする」「患者よりも自分が先に身体を壊して亡くなるかもしれない」などといった話をしていました。
確かに、医師不足が深刻な中では、現実としてそうした過酷な勤務の実態はあるでしょう。
しかし、もしそうした状況を改善してもらいたいのであれば、伝えるべき相手は勤務先の病院か労働組合、労働基準監督署、厚生労働省です。
また、単純に愚痴をこぼし、共感を得たいのであれば、SNSの中でも医療・介護関係者が集まるクローズドなコミュニティで呟けばいい話です。
オープンの場でこうした話を披露すれば、患者やこれから医療機関を受診しようと考えている人の目にも触れます。
患者からしたら、意識朦朧の医師に診察・治療してもらうのは不安でしかありません。
それを考えると、単に「閲覧数・フォロワー数を増やす」ことを目標にした、面白おかしいだけの投稿は、結果として医療業界にとってマイナスとなる可能性が高いのではないでしょうか。
もし、勤務医のそうした過酷な勤務環境の原因が「咳が出る程度の軽微な症状でも大学病院に行く」という患者の医療との関わり方にあって、それを改めて欲しいのであれば、せめて動画の最初か最後に「大きな病院に行く前に、まずは自宅の近くのかかりつけ医に相談しましょう」などと患者側の行動変容を呼びかけるべきです。
しかし、そうした動画はほとんどありません。単に「医師・看護師・介護職は大変だ」「変な患者・利用者、その家族に振り回されている」で終わってしまっています。
これでは残念ながら、両者の関係の改善にはつながりません。むしろ、相互対立を引き起こす可能性すらあります。
そして、こうした動画は、将来医療・介護職を志す若者たちが見ているケースも多いでしょう。
過酷な勤務状況や職場内での人間関係のトラブルの多さを前面に打ち出した動画を見て「ほかの道に進もう」と考えてしまう可能性もあります。
これでは医療・介護業界の人材不足は解消しません。
人手不足、夜勤など不規則な勤務体系など、医療・介護業界の労務環境は決して楽ではないことは事実です。
しかし、それを広く伝えることが結果的に自分の首を絞めることにもなります。
「確かに夜勤は体力的にも大変です。でも、この時間を使って集中的に勉強したことで、介護福祉士試験に一発合格しました」など、大変さの中にもポジティブなエピソードをおりまぜて、新規就労者を増やしていくような工夫をしていく必要があるのではないでしょうか?
介護の三ツ星コンシェルジュ


