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生野の医療法人 17億円の負債抱え倒産 事業引受先はなぜ現れなかった?

大阪市生野区で病院や介護老人保健施設を運営する医療法人(以下:AまたはA病院)が3月2日、17億円強の負債(東京商工リサーチ調べ)を抱えて破産しました。

A病院は診療を停止し、入院患者の転院手続きなどを進めています。
老健は今月いっぱい運営を継続し、その間に利用者の受け入れ先を探すとされています。

物価高や人件費の上昇で医療機関や介護事業所の経営難が伝えられています。

20年以上介護事業コンサルティングを手掛ける会社の社長は「経営状況の悪さは過去2番目」と事態の深刻ぶりを語ります。

倒産する医療法人や介護事業者も増加していますが、多くの場合は病院や高齢者住宅の運営承継者が現れますので、入院患者や入居者が行き場を失うのは珍しいケースです。

なぜ今回は運営承継事業者が現れなかったのでしょうか。

医療・介護事業のM&A支援を手掛ける会社は、Aについて「事業の譲渡先を探していたものの買い手が現れなかった」と語ります。

そこでM&Aが成立しなかった原因について、私なりの分析をしてみます。

経営者が当初から短期で売却を考えていた場合や、他事業の資金調達のための売却、経営者の急死や親会社の倒産などといったケースでは、経営が好調でもM&A市場に譲渡案件として出てくることがあります。

しかし、多くは「現在の状況が芳しくない」「この先の成長が見込めない」という事業が譲渡案件になります。

これらを承継する側が考えるのが「自分たちが引き継いで経営を好転させられるか」です。
その点で今回の倒産を改めて分析してみましょう。

Aは、過去にも債務超過に陥っていた時期がありました。

つまり、元々経営体質は脆弱だったと考えられます。
買い手としては「いかに黒字を維持できる体制に転換できるか」がポイントになります。

一般的に病院や高齢者住宅は規模が小さいほど、収入に占める間接部門や広告宣伝費などの支出の割合が高くなり経営効率が悪化します。

地域性などにもよりますが、病院の場合は安定的に経営が成り立つ規模の目安は200床以上と言われています。

A病院は64床と小規模でした。
増床しようにも周辺は市街地で土地もありません。

また、生野区という地域柄、そして診療科目が外科・整形外科・脳外科・リハビリテーション科という点からも患者の多くは近隣の高齢者でしょう。仮に遠方へ移転しても、患者の多くが通院できなくなる可能性があります。

つまり、規模拡大による収入増は困難です。

では、人材教育や入れ替えで業務品質を向上させて患者を増やすのはどうでしょうか。

ある介護事業所によれば、A病院では昨年末に大量の離職者が出たそうです。

そして、これはネット上の情報で真偽は確認できていないのですが、昨年末の賞与支給額大幅減が大量離職の理由だそうです。

つまり経営悪化→賞与減→従業員の就労意欲低下→サービス品質の低下→患者減→さらに経営悪化という悪循環に陥った可能性があります。

引受先が従業員を送り込む方法もありますが、そこまで人員に余裕のある事業者は少数です。

また一度落ちた従業員の意欲を再び引き上げるのは容易ではありません。
「再び経営が軌道に乗るまでには時間がかかる」という判断から、引受先が現れなかった可能性もあります。

ほかにもさまざまな理由があるでしょうが、私としては「もっと早く譲渡の決断ができなかったのか」という感想です。

賞与支給額大幅減は、企業として「末期症状」の印象です。余程のウルトラC技を出さない限り、そこからの逆転は期待薄です。

経営者、特に創業者やその一族の場合は「会社を手放す」ことを躊躇しがちです。

その気持ちは理解できますが、従業員や患者・利用者のことを考えたら「早めに決断したほうが吉」とも言えそうです。


介護の三ツ星コンシェルジュ

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