高齢者住宅入居紹介事業に認定制度創設? 高額手数料の問題解決に国も本腰
9月7日に複数のメディアが「厚生労働省が高齢者住宅の入居紹介事業者(以下:紹介事業者)の認定制度を創設する方針を固めた」と報じました。
昨年、一部の高齢者住宅が難病患者など高い介護・診療報酬が得られる入居者を受け入れるために、紹介事業者に高額(1件150万円とも)の紹介料を支払っていたことが発覚しました。
これを受けて厚生労働省が2025年4月より「有料老人ホームにおける望ましいサービスのあり方に関する検討会」を立ち上げ、数回にわたる話し合いを行ってきました。
今回報じられた認定制度の創設も、それらの議論の中で出てきたものです。
昨年、高額紹介料の存在が報じられた際は、ネットなどで多くの批判の声が上がりました。
主な理由は、
①人に値付けをする行為はけしからん
②紹介料の原資は介護報酬。自分たちの支払った介護保険料や税金が紹介料に使われるのは納得がいかない、です。
このうち①については、世間では、転職エージェントの紹介手数料や事故などで死亡させた場合の遺族への慰謝料の額にもあるように、人によって金銭的価値が違うのが現実です。
しかし、これらは学力や仕事の能力など高い方が本人にとっても有利な能力に基づくものです。
それに対して紹介料は、当人や家族にとっては「低い方がありがたい」要介護度や医療依存度が高い人ほど高額になります。
これが「他人の不幸で儲けている」という批判につながったといえます。
次に②ですが、この批判は的外れです。
高齢者住宅運営は事業ですから、空室解消を目指すのは当然です。
「紹介料はけしからん」となれば、運営事業者は広告を打ったり、チラシを撒いたり、外回りを強化したりなど他の形で営業をせざるを得ません。
それにかかる費用の原資は介護報酬なのですから紹介料と何も変わりません。
「介護報酬を使うのがおかしい」という主張を受け入れるならば、取り得る対策は、
「営業費用を介護報酬から捻出しなくても済むように、家賃や入居一時金を高く設定する」
「高齢者住宅が営業しなくていいように、入居希望者を行政が機械的に振り分ける」
「空室が多くても経営が成り立つように、国や行政が運営事業者に対し空室借上げなどの補償をする」
しかありません。
いずれも入居者・一般国民にとってはメリットがありません。
また、高額の紹介料が発生する理由として「高齢者住宅の数が多すぎて入居者を取り合っている」という批判もあります。
しかし、これも的を射ていません。
高齢者住宅の数が入居検討者よりも多いからこそ、消費者は自分の身体状況や資金力、望む生活に見合った高齢者住宅を選べます。
そして高齢者住宅側は選ばれるために、ハード・ソフト両面での品質向上を目指します。
それがマーケットの健全な姿です。
確かに、現在の紹介事業のあり方について問題が無いわけではありません。
しかし、昨年来の紹介事業に関する報道やそれに対するネット上などでの反応を見ると、個人的には「やや感情論に走っているのではないか」という印象を持ちます
また、高額手数料の問題で言えば、「そもそも高額の手数料を設定したのは誰か」という点も考える必要があります。
「キャンペーン」と称して「今月一杯は紹介料を倍にします」などと紹介事業者に持ち掛ける高齢者住宅もあると言われています。
つまり、問題になったような高額の紹介料が発生した原因は、高齢者住宅側にもあると言えます。
しかし、厚労省が打ち出した認定制度は、結果として紹介事業者側にのみ負担を強いるものになると思われます。
これについて介護業界内では「結局のところは、高齢者住宅側と紹介事業者側の『政治力』の差が出たのではないか」という意見も出ています。
介護の三ツ星コンシェルジュ



