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有料老人ホームの運営に関する検討会を厚労省が立上げ 「囲い込み対策」などについての議論を予定

 厚生労働省が有料老人ホームのあり方に関する検討会を新たに立ち上げることになりました。

 2025年3月17日に開催された社会保障審議会介護保険部会の資料で示されたもので、名称は「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(仮称)」。

 今春に第1回の会合を行い、第2回以降は必要に応じて各種ヒアリングなどを実施、夏ごろまでに取りまとめを行う予定です。

 この検討会が立ち上がった背景には、2024年以降、有料老人ホームの「運営の質」について疑問を感じさせるような事件やニュースが相次いだことが考えられます。

 スタッフが短期間で大量に離職して入居者へのサービス提供ができない状況になり、経営者が一方的にホーム閉鎖を通告して行方をくらました「見捨てられた老人ホーム」騒動がありました。

 ターミナル期の人や特定の難病の人を受け入れる有料老人ホームを運営する大手事業者で、約28億円という巨額の訪問看護報酬の不正が発覚しました。

 また、有料老人ホームが高齢者住宅紹介事業者に対して、「別表7」など医療依存度の高い人を紹介した場合には100万円を超える高額な紹介料を設定していたことも報じられました。

 こうした事態が発生したのは、運営事業者側のモラルやガバナンスの欠如が最も大きな要因であることは間違いありません。

 一方で、厚生労働省や自治体側には、
①自社・外部事業所の組み合わせによる多様なサービスが提供されている住宅型有料老人ホームについて、サービス提供実態を完全に把握できていない
②有料老人ホームの届出時に、運営者の体制や事業計画などの事前チェックを十分に行うことが難しい
③入居者への過剰なサービスを行っている可能性のある有料老人ホームに対する家賃やケアプランの確認・点検が十分に行えていない
などの事情があり、結果として運営体制などに問題がある有料老人ホームが放置されてしまっていました。

 そうしたこともあり、今回立ち上がる検討会では「有料老人ホームへの運営及びサービス提供のあり方」「有料老人ホームの指導監督のあり方」「有料老人ホームにおけるいわゆる『囲い込み対策』のあり方」の3点を議論のテーマとしています。

 具体的にどのような議論が行われるかはわかりませんが、検討会が立ち上がった経緯を考えても、有料老人ホームの運営事業者にとっては「運営指導がこれまでよりも緩くなる」「訪問介護や訪問看護、デイサービスの同一建物減算の規定が緩和される」「自治体や消費者に対して報告・開示しなくてはならない情報が減る」といったありがたい話になるとは思えません。

 また、高齢者住宅紹介事業者や居宅介護支援事業所など、有料老人ホームの運営に深く関わっている事業者にとっても、何らかの形で業務に影響が出る可能性があります。

 有料老人ホームは2022年時点で全国に1万5928棟あります。
高齢者住宅の各種類型の中でも特別養護老人ホームや認知症グループホームを上回り、最も多くなっています。

 定員数ベースでも61万1056と、最も多い特別養護老人ホーム(64万1700)に迫る勢いで増えており、社会にとっては必要不可欠なインフラとなっています。

 中でも、自治体の総量規制の影響を受けないことから住宅型有料老人ホームの割合が増えているのですが、そのことが「囲い込み」問題の増加にもつながっています。

 昨年来の報道で、消費者の有料老人ホームに対する目も厳しくなっています。

 これまで以上に「経営状況に関する情報を積極的に開示する」「外部の介護保険サービス利用を制限しない」など適切な形での運営が求められると言えるでしょう。


介護の三ツ星コンシェルジュ

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