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入居紹介料に上限規制の可能性も 「紹介料100万円報道」の影響②

 前回のコラムにもあるように、高齢者住宅紹介事業者(以下:紹介事業者)に対し、高齢者住宅運営者(以下:運営者)が高額の紹介料を支払うことを問題視する報道が波紋を広げています。

 今回は、「高額紹介料の問題点」を検証します。

 まず、「紹介料という仕組みそのものが好ましくない」という意見もあります。
紹介料の原資は運営者の収入、つまりは介護報酬です。それを紹介料に使うのは介護報酬の目的外使用にあたる、という指摘です。

 しかし、さすがにこの主張には無理があるでしょう。
紹介料の支払いが不適切というならば、運営者はお金を払ってテレビやラジオ、新聞や雑誌に広告を打つことも不適切ということになり、経営が成り立たなくなります。

 また、紹介業の活用は、本来は自社で行うべき入居者募集活動をアウトソーシングするのと同義です。
自社で営業スタッフを雇用するよりも安い価格で多くの成果を得られるのであれば、結果的に介護報酬を無駄に使うこともなくなります。

 今回は「紹介事業者を使うこと」ではなく「紹介料の額」が問題視されているのです。

 では、実際のところ紹介料の額はどの程度になっているのでしょうか。

 前回のコラムでも紹介した、高齢者住まい事業者団体連合会(以下:高住連)が2024年12月27日に発表した「高齢者向け住まい紹介事業の実態把握」を見てみましょう。

 2023年11月から2006年10月の紹介料の平均は21万5000円でした。
前回のコラムで、サービス付き高齢者向け住宅(以下:サ高住)が登場した際の「宅建業法における仲介手数料の仕組みを導入しよう」という動きについて紹介しました。

 宅建業法では仲介手数料は「最大で家賃の1月分」です。
それを考えると、20万円強という紹介料は、サ高住や有料老人ホームの1ヵ月の入居費用と同程度ですので、不自然とは言えないでしょう。

 一方で、新規開設の高齢者住宅など、短期で多くの空室を埋めたい場合には「キャンペーン」と称して紹介料を大幅に引き上げることが珍しくありません。

 2023年11月からの1年間で、最も高かった紹介料の額を回答してもらったところ(総回答数196)、40~60万円未満が48件と最も多く、次いで20~40万円の42件でした。

 その一方で「100万円以上」が54件あります。

前回のコラムでは、この調査で「紹介料の決め方」を聞いたところ、「ホームごとに介護度や医療必要度等を考慮して決めている」が最も多かったと紹介しました。

 この回答をした紹介事業者で、なおかつ紹介料の最高額が100万円を超えたところに「100万円を超えた理由」を聞いたところ、以下の様になりました。

①キャンペーンで上乗せ紹介料がホームから示された(17件)
②もともと「一時金の〇%」という仕組みで、高額物件だった(4件)
③ガン末期・別表7、8の人は〇円とホームから示された(2件)

 ②については、元々の紹介料の計算ルールに則ったものですので納得です。
①は、キャンペーンとしても高額な感は否めませんが、キャンペーン自体は絶対的に悪いとは言えないでしょう。

 それに対し③はどうでしょうか。

 運営者や物件により紹介料が異なるのは商取引としては自然なことです。

 しかし、入居者個々に紹介料の差をつけることは人に「値付け」をしているのと同じで道義的にも許されませんし、結果的に「軽度の人や医療依存度の低い人は受け入れたくない」ということになりますから「合理的な理由なしに利用を断ってはいけない」という介護保険サービスの考えにも反します。

 前回コラム冒頭で紹介したように、こうした行為について大手新聞社が問題視し、それに対して厚労相が「不適切」との見解を示しました。

 運営者・紹介事業者とも早急に改善する必要があります。


介護の三ツ星コンシェルジュ

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