入居紹介料に上限規制の可能性も 「紹介料100万円報道」の影響①
先日、大手新聞が高齢者住宅入居者紹介に際して、「ある高齢者住宅運営者(以下:運営者)が要介護度・医療依存度の高い高齢者について、1人100万円などの高額な紹介料を設定している」と報じました。
これを受けて、厚生労働大臣は2月18日、「高齢者住宅紹介事業者(以下:紹介事業者)に対して、要介護度などに応じた高額な紹介料を支払うのは不適切」「紹介料の上限規制を設けることについて対応を検討する」という旨の発言をしました。
これまで紹介事業者は、届出や許認可の必要がなく誰でも自由に開業できました。
また、管轄省庁もないので、業務に関して法的な縛りやルールが一切ありませんでした。そのため「紹介事業者のサービス品質担保のためにも、何らかルールは必要ではないか」と声は以前よりありました。
その一環として、運営者の団体である高齢者住まい事業者団体連合会(以下:高住連)が、紹介事業者に法人名・代表者名・相談員の数などの各種情報を届け出てもらい、それを公表する「高齢者住まい向け紹介事業者届出公表制度」を実施していますが、あくまでの任意の協力依頼に過ぎませんでした。
しかし、今回厚生労働大臣が言及したことで、紹介料の額だけでなく、紹介業事態について、何らかの規制・ルールが設けられる可能性が高くなりました。
紹介事業者のビジネスモデルも大きく変化せざるを得なくなることが予想されます。
紹介事業者は、運営者と事前に契約を締結し、入居する人を紹介した場合に紹介料を受け取ります。紹介料の額に規定はありません。
実は、サービス付き高齢者向け住宅(以下:サ高住)制度が創設されたときに、賃貸住宅であり入居に際しては不動産賃貸借契約を締結することから、「一般の賃貸住宅と同様に宅地建物取引業法を適用し、仲介料もそれに合わせたもの(貸主・借主それぞれから家賃の半月分、もしくはいずれかから家賃1ヶ月分が上限)にしよう」との意見が出て、紹介事業者の中には、社員に宅地建物取引士の資格を取得させるところもありました。
しかし、国が「高齢者住宅では、紹介事業者はあくまで『紹介』する立場であり、入居契約に直接関わらないため『仲介』には該当しない」という解釈をしたことから、結局のところ宅建業法は適用されず、紹介料についても基準や規定は設けられませんでした。
以前は、高齢者住宅は有料老人ホームが主で、かつある程度の額の入居金をとるケースがほとんどでしたので、紹介料も「入居金の〇%」などといった形で、何となく「相場」のようなものがありました。
しかし、サ高住という入居金をとれない高齢者住宅が増加したことや、有料老人ホームでも「月額費用を高くする代わりに入居金を安くする、入居金をとらない」などの複数の料金体系を適用するケースが一般的になってきました。
この結果として、入居金を元に紹介料を算定することが難しくなっています。
こうした中で、紹介料は施設運営者・紹介事業者両者の協議で決まるケースが一般的になりました。
高住連は2024年12月27日、運営者・紹介事業者を対象に実施した紹介事業の実態把握のアンケート結果を発表しています。
それによると「紹介料の決め方」(複数回答)では、「ホームごとに介護度や医療必要度等を考慮して決めている」が最も多く、次に「ホームごとに自費部分の月額費用をベースに決めている」でした。
このように、紹介料は個々のホームの状況などによって決められており、そうした流れの中で、冒頭で報じられたような高額の紹介料が発生するケースも出てきています。
では、こうした高額の紹介料は何が問題なのでしょうか。次のコラムで、その点について解説します。
介護の三ツ星コンシェルジュ


