老人ホーム選びの知識

親を有料老人ホームや介護施設に入居させる決断―そのきっかけと見極め時期、相談先

親の介護を担う50代以上の方にとって、「いつ」「どのタイミングで」有料老人ホームや介護施設への入居を決断すべきかは、非常に大きな悩みです。

自宅での介護を続けることの限界や、親の状態の変化、家族の負担など、さまざまな要因が複雑に絡み合います。

本コラムでは、実際の事例を交えながら、入居のきっかけや見極めの時期、相談先について詳しく解説します。

1. 入居を決断するきっかけ

有料老人ホームや介護施設への入居を決めるきっかけで最も多いのは、「入院して自宅復帰が難しかった」というケースです。

たとえば、転倒や病気で入院した後、身体機能が低下し、これまで通り自宅での生活が難しくなった場合、家族で話し合いのうえ施設入居を選択することが多くなっています。

また、介護認定を受けていない比較的元気な高齢者でも、「一人暮らしの継続が難しくなった」「今は自立しているが、将来が不安」といった理由で入居を検討するケースも増えています。

たとえば、親が日常生活は自分で送れていても、買い物や通院の付き添いが必要になった、あるいは夜間の転倒や体調の急変が心配で家族が不安を感じるようになった場合です。

具体的な事例

80代女性Aさんは、これまで一人暮らしを続けていましたが、夜間のトイレで転倒し骨折。
入院後も歩行が不安定になり、家族が「もう自宅での生活は危ない」と判断し、退院後すぐに施設入居を決断。

70代男性Bさんは、認知症の進行で徘徊が増え、家族が目を離せない状況に。
家族の疲労が限界に達し、「これ以上は自宅では無理」と判断。ケアマネジャーに相談し、グループホームへ入居。

2. 見極めのタイミング――どんな状態になったら決断すべきか

施設入居のタイミングは、親の状態だけでなく、介護者である家族の体力や精神的な余裕も大きなポイントです。

(1)親の状態による見極め

・日常生活動作(ADL)の低下
食事や排泄、入浴、着替えなど、基本的な生活動作が自力でできなくなった。

・認知症の進行
徘徊や夜間の混乱、火の不始末など、家族だけでは対応が難しい行動が増えた。

・健康リスクの増加
転倒や誤嚥、急な体調変化など、命に関わるリスクが高まった。

・一人暮らしの不安
家族が遠方に住んでいる、見守りが難しい、緊急時の対応ができない。

(2)介護者側の限界

・心身の疲労
介護で腰や膝を痛めた、慢性的な睡眠不足、精神的なストレスが強い。

・生活への影響
仕事や自分の健康、家庭生活に支障が出ている。

・「生きているのが辛い」と感じる
介護が生活の全てになり、希望を見失いかけている。

このような状態になったときは、無理をせず、施設入居を真剣に検討するべき時期です。
介護者が限界を超えてしまうと、共倒れになりかねません。

3. 相談先―誰に、どこに相談すればいいか

施設入居を検討する際、まずは「地域包括支援センター」に相談することをおすすめします。

地域包括支援センターは、各市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、ケアマネジャーや保健師、社会福祉士などが常駐し、介護サービスや介護保険の申請、施設選びのアドバイスなどを無料で行っています。

(1)相談の流れ

・地域包括支援センターに連絡
親が住んでいる地域のセンターに電話や訪問で相談。
状況を伝えると、必要なサービスや手続きの説明を受けられます。

・ケアマネジャーの紹介・選定
要介護認定の申請や、在宅サービスと施設入居の選択肢について具体的に相談できます。

・施設見学・情報収集
気になる施設があれば、事前に見学や説明を受けることが重要です。
待機リストがある場合も多いので、早めの行動が安心につながります。

その他の相談先
・主治医やかかりつけの医療機関
・地域の社会福祉協議会
・民間の介護相談窓口やNPO
・有料老人ホーム入居相談センター
・介護経験のある知人や親族

4. 早めの準備と心の持ち方

施設入居は「親に申し訳ない」「まだ大丈夫かも」と迷いがちですが、早めに情報収集や相談を始めておくことで、いざという時に慌てずに済みます。

特に、施設の待機期間が長い場合もあるため、親が元気なうちから選択肢を広げておくことが大切です。

(1)具体的な準備
・親の健康状態や生活状況の記録
・施設のパンフレットや見学メモの整理
・兄弟姉妹や家族内での話し合い
・親本人の希望や気持ちの確認

5. まとめ「自分を責めず、相談を」

親の介護は、家族の愛情と責任感から「自分で何とかしなければ」と思いがちです。

しかし、無理を重ねて共倒れになる前に、地域包括支援センターなどの専門家に相談し、早めに選択肢を検討することが、親の幸せにもつながります。

「誰にも相談できない」「子どもに迷惑をかけられない」と思い詰めず、まずは気軽に相談窓口を利用しましょう。

家族の負担を減らし、親が安心して過ごせる環境を整えることが、最も大切な親孝行です。

【事例まとめ】
Aさん(80代女性)
転倒・骨折で入院後、家族が「自宅復帰は危険」と判断し、施設入居を決断。

Bさん(70代男性)
認知症の進行で徘徊が増え、家族の負担が限界に。ケアマネジャーと相談しグループホームへ。

Cさん(50代娘)
遠方で暮らす親の一人暮らしが心配で、地域包括支援センターに相談。
見守りサービスと介護予防プランの提案を受け、早めに準備を開始。

親の介護は、家族だけで抱え込まず、地域や専門家の力を借りて、無理のない選択をしていきましょう。


介護の三ツ星コンシェルジュ

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