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【介護職向け】介護食における流動食の役割と美味しく提供するアイデア

こんにちは!「しんぶろぐ〜介護ノート~」を運営しているしん(@shinbloger)です。
簡単に自己紹介させてください。

・15年以上の介護経験がある現役の介護士です。
・介護福祉士と福祉用具専門相談員の資格を持っています。
・認知症デイの相談員4年以上の経験があります。

流動食は、嚥下困難な方の食事摂取には有効な食事ですが、濃度の不適切により飲み込みが困難になったり、栄養バランスが偏りやすいなどの、注意点もあります。

今回は、そんな流動食の役割と美味しく食べるアイデアのコラムになります。

3分ほどで読めるので、ぜひ最後までご覧ください。

はじめに:流動食の必要性とその役割

加齢により咀嚼機能や嚥下機能が衰えると、従来の食事が難しくなります。

そんな時に、栄養の確保として頼りになるのが流動食です。
流動食は、固形物をこすことで作られるトロトロの液タイプの食事です。

流動食を取り入れることで、飲み込む力が弱まった人でも安全に、かつ効率的に必要な栄養を摂取することができます。
具体例は、具なしスープや重湯、ヨーグルト、茶わん蒸しなどです。

また、流動食は消化が良いため、消化器系に負担をかけずに栄養素を体に吸収させることもできます。
流動食は嚥下障害や消化器系の問題を抱える人々の健康維持と生活の質の向上に役立っています。

流動食が適用される主な状況

流動食の適用者を選択する際の主な指標は次の4つになります。

・嚥下困難を抱える方

嚥下困難を抱える方は、脳卒中、パーキンソン病、筋ジストロフィーなどの神経系疾患や、口腔癌、咽頭癌の治療後などに見られます。

これらの状態では、固形物の摂取が難しくなり、安全に食事をするために流動食への切り替えが必要になります。

流動食により、栄養摂取を確保しつつ、飲み込み時の誤嚥のリスクを最小限に抑えることができます。

・口腔内の問題を抱える方

歯の喪失、義歯の不適合、口腔炎などにより、口腔内の問題を抱えると食事時の痛みや不快感を引き起こし、固形食の摂取が困難になります。

流動食は、これらの問題に対して、安全かつ快適に必要な栄養を摂取する手段となります。

・消化器系の疾患を持つ方

炎症性腸疾患や胃腸の手術後など、消化吸収機能が低下している場合には、固形食の摂取が体に負担をかけることがあります。

流動食は、消化が容易であるため、消化器系の負担を減らしつつ必要な栄養素を吸収することができます。


・病気などの回復を促す必要がある方

病気のなり始め時期や手術からの回復期にある方にとって、適切な栄養摂取は回復を促す上で欠かせません。

しかし、この時期は身体が通常の食事を受け付けにくいことが多く、消化や吸収が容易な流動食が理想的です。

流動食は、栄養が濃縮され、消化に負担をかけずに必要なエネルギーや栄養素を効率良く摂取できるため、体力の回復を支援してくれます。

流動食の適用者の選択にあたっては、医師や栄養士、言語聴覚士などの専門家と連携し、個々の患者や高齢者の具体的な状況やニーズに合わせた食事計画を立てることが大切です。

美味しさと楽しみを提供するアイデア

流動食は、嚥下困難や消化器官に疾患がある方が、安全に栄養摂取できる選択肢です。

しかし、そのトロトロとした見た目や触感のなさから、食事の楽しみが減少してしまうこともあります。
特に高齢者にとって、美味しい食事は日々の楽しみの一つです。

ここでは、流動食を美味しく、そして楽しく食べるためのアイディアを紹介します。

・料理を一つ一つ説明する

流動食はトロトロしており、ぱっと見ただけではその内容を正確に把握することが難しいです。

しかし、介護者が料理を一つ一つ丁寧に説明することで、食べる人はそれが何であるかをイメージしやすくなります。

たとえば、「こちらはサバの味噌煮をなめらかにしたものです」「このスムージーには、昨日収穫されたばかりの新鮮なイチゴを使用しています」と紹介することで、食事への期待感や楽しみが増します。

このように料理を紹介することで、食材への理解を深め、食事の時間をより充実したものにすることができます。

・利用者の好きな料理を使う

利用者の好きな料理を流動食に取り入れることも良い方法です。
好みの料理は食が進みます。利用者やご家族にリサーチして、取り入れてみましょう。

・ソフト食を使う

ソフト食は、流動食よりも固形感を保ちながら、食べやすく柔らかく加工された食事形態で、嚥下や咀嚼に困難を抱える方々に最適です。

この食事の特徴は、固形をある程度維持しているため、食材が何であるかを視覚的にも理解しやすく、食事の満足感を高めることができる点にあります。

嚥下困難を抱える方でも安全に食べられるように設計されているため、栄養摂取の確保とともに、食事の時間をより楽しむことができます。

・刻み食が適用できないか検討する

流動食だけでなく、刻み食が適用可能かどうかを検討するのも良い選択肢です。

刻み食は、常食を小さなサイズに切り分けることで、嚥下しやすくした食事形態です。
流動食に比べて触感が残るため、より食べ応えを感じられます。

ただし、刻み食の適用については、利用者の具体的な健康状態や嚥下能力を正確に評価し誤嚥を避けるために、医師や栄養士、言語聴覚士などの専門家と相談して、適用を検討しましょう。

刻み食への切り替えで見せた食事改善の事例

嚥下困難により流動食を摂取していた男性利用者Aさんは、「美味しくない」とおっしゃり、食事量が十分に取れていませんでした。
この状況を改善するため、言語聴覚士と相談した結果、流動食から刻み食への切り替えを試みることになりました。

刻み食により、Aさんは食べ物の触感を感じられるようになり、食事の時間が楽しみに変わりました。

結果として、食事量が明らかに増加し、Aさんの表情にも笑顔が見られるようになりました。

以前は食事に消極的だったAさんが、「ごはんまだ?」と聞くほどになり、食に対する前向きな変化が見られるようになりました。
この事例から、流動食だけでなく刻み食の適用を検討することが、嚥下困難を抱える人々の食事改善に役立つことがわかります。

流動食の役割と美味しく提供するアイデアのまとめ

流動食は嚥下困難や消化器官の疾患を持つ方々にとって、安全かつ効率的に栄養を摂取するための重要な選択肢です。

しかし、その見た目や味わいの単調さから食事の楽しみが減少しがちです。

この問題を解決し、流動食を美味しく楽しむためには、いくつかの工夫が必要になります。

料理を一つ一つ丁寧に説明したり、利用者の好きな料理を流動食に取り入れたり、ソフト食や刻み食を適用することで、食事の触感を取り戻し、より食べ応えのある体験を提供できます。

食事は、生活の質を向上させる重要な要素であり、適切な支援と工夫によって、嚥下困難を抱える方々も美味しく、楽しく食事をすることが可能です。

流動食の提供においては、栄養摂取の確保だけでなく、食事の質の向上にも注目し、利用者の幸福感を高めることが求められます。

今回は以上になります。

介護の三ツ星コンシェルジュ

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