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自立者向けホーム 入居率改善は2年ぐらい先? コロナ禍で「検討先延ばし」の影響大きく

 先日、大阪市内で複数の有料老人ホームが一堂に会し、高齢者やその家族などに向けて自らのホームをアピールするというイベントが開催されました。
いわば有料老人ホームの「展示会」です。

 この手のイベントは、かつては各地で複数の主催者が実施していましたが、コロナ禍で軒並み中止となりました。
このイベントも2019年春以来の開催となります。

今回開催されたイベントの出展者は、要介護・要支援認定を受けていない人でも入居可能なホームが多くを占めていました、その中の一つに話を聞いてみると「今は、とにかく空室が増えて困っている」とのことでした。

 こうした自立者向けのホームと、特別養護老人ホームなどの要介護者専門のホームとの大きな違いは「入居する側に緊急性がどれだけあるか」です。

要介護者専門のホームには「もうすぐ病院を退院するのだが、この身体状況ではとても自宅では生活できない。1週間以内にホームを探したい」という緊急を要する家族やケアマネジャーなどからの相談が多く寄せられます。

ホーム側も、そうしたニーズに対して「今は、コロナ禍なので…」とは言っていられません。
ですから内覧会を休止したり、見学時間や人数・見学場所を制限したりはしながら、コロナ禍でもそれなりに新規入居は進んでいました(その分、入居ミスマッチが増えたと指摘する声もありますが…)。

 それに対して自立者向けのホームでは、自宅の立ち退き・解体が決定でもしていない限り、「いつまでに入居をしなくてはいけない」というはっきりとした期限がある入居検討者は殆どいません。

「コロナが落ち着いてから、改めてホーム探しをするか」という選択をすることもできました。
コロナ禍では、自立者向けホームでも、感染対策のために入居者の外出を原則禁止とするところがありました。自宅にいた方が生活上の制約が少ないのですから、ますますホーム探しが先延ばしになっていました。

 こうした状態が3年以上続いた結果、看取りや医療依存度の高い人でも受け入れ可能なホームへの転居などで入居率が大きく低下してしまった、というのが現実のようです。

 また、ブース出展者に話を聞くと「こうしたイベントに来る高齢者は、総じて老人ホームに関する知識がまだまだ十分ではなく、今すぐの入居も考えていない。ブースである程度踏み込んだ話ができ、見込み客になったとしても、実際の入居に至るには2年ぐらい先になることが多い。長期的な視野で見ていく必要がある」とのことでした。

 つまり、コロナに関する各種制限が撤廃され、世の中がほぼ日常に戻ってもうすぐ1年になりますが、こと自立者向けのホームへの新規入居に関しては、コロナ前の状況に戻るにはあと2年程度はかかると言えそうです。

水道高熱費など運営コストが高騰する中で、その状態に耐えられる余力があるホームがどれだけあるのか、などの点も気がかりです。

 また、ここ1~3年程の間に新規採用された介護スタッフの場合、入居者数が少ない状態での運営が「通常の状態」になってしまっている可能性もあります。

入居者が増え、レクリエーションやイベントがコロナ以前のように活発な状態になったときに「業務負担が増えた」と感じてしまい、モチベーションの低下、ひいては離職につながってしまう可能性も否定できません。

 自立向けのホームは入居金が高額なことが多いため、どうしても検討に時間がかかることは避けられません。

しかし、入居費用の割引などのキャンペーンや、SNSなどこれまでとは異なるツールを活用するなどして、早期に入居状況を改善させていく必要があると言えそうです。

介護の三ツ星コンシェルジュ

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