2024年度介護報酬改定解説③ 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
2024年の介護報酬改定では、介護人材不足が長引く中で、さらなる介護サービスの質の向上を目指し、
①介護職員への処遇改善
②生産性向上などを通じた働きやすい職場環境づくり
③効率的なサービス提供の推進が方針として打ち出され、
その具体的な施策として以下の3つが実施されました。
〇介護職員等処遇改善加算の一本化
〇生産性向上推進体制加算の創設
〇特定施設の人員基準の緩和
今回のコラムでは、この3つの施策について詳しく見てみましょう。
介護職員等処遇改善加算の一本化
今年5月までは介護職員の処遇改善に関しては「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等加算」の3つがありました。
それぞれの加算でどの区分が適用されるかにより、実際の加算率は5.5%~22.4%まで18段階に分かれており、制度の複雑化が指摘されていました。
そこで6月より要件を再編・統合する形で「介護職員等処遇改善加算」が新設されました。
区分は(Ⅰ)∼(Ⅳ)で、訪問介護の場合には、最も高い(Ⅰ)で24.5%の算定率となります。
なお、来年6月末までは経過措置として、旧来の3加算の取得状況に基づく加算率を維持した上で、今回の改定による加算率の引上げを受けることが可能となっています。
新設された「介護職員等処遇改善加算」の算定要件は以下の通りです。
○キャリアパス要件
制度の作成及び書面を通じて全介護職員へ通知することが義務です。
また、経験・技能を有する介護職員のうち1人以上は賃金改善後の年収が440万円以上であることも求められます。
○月額賃金改善要件
新加算(Ⅳ)相当の加算額の2分の1以上を月給の改善に充てることなどが求められます。
なお、この要件は2025年度より適用されます。
○職場環境要件
「入職促進に向けた取り組み」「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」「やりがい・働きがいの醸成」など6つの項目のうち、いくつかを実施する必要があります。
生産性向上推進体制加算の創設
加算の対象となるのは、施設系、多機能系、短期入所系、居住系サービスです。
月100単位の生産性向上推進体制加算(Ⅰ)の算定要件は、
①全居室への見守り機器の設置
②同一時間帯に勤務する全ての介護職員が、インカムなどの職員間の連絡調整迅速化に資するICT機器を使用
③介護記録作成効率化に資するICT機器の活用、の全てを満たす場合です。
月10単位の生産性向上推進体制加算(Ⅱ)の算定要件は、離床センサーなど見守り機器の1つ以上の導入などです。
なお(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できません。
特定施設の人員基準緩和
地域密着型を含む特定施設入居者生活介護について、以下の要件を満たした場合、要介護の利用者3人に対し1人の介護職員を配置する基準が「要介護者3人に対し0.9人」に緩和されます。
○利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会において、必要な安全対策について検討などをしている
○見守り機器等のテクノロジーを複数活用している
○職員間の適切な役割分担の取り組みなどをしている
○これらの取り組みにより介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が行われていることがデータにより確認される
これらの要件や単位数は複雑ですので、必ず厚生労働省が発表している報酬改定に関する資料や解釈通知などで十分に確認するようにしましょう。
介護の三ツ星コンシェルジュ