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2024年介護報酬改定全体動向を解説

2024年の介護報酬改定はプラス1.59%と2009年度に次いで2番目に高い改定率となりました。

ただ、1.59%のうち0.98%は介護職審の処遇改善に充てられているため、介護事業者へは0.61%の配分にとどまっています。

改定の中身を見ると、昨年度の収支差率が赤字の特養、老健では他の事業者に比べ引き上げ率が高くマイナス要素は見当たらない改定でしたが、収支差率の黒字が大きかった訪問介護の基本報酬が引き下げられたことは業界に大きな破門を投げかけました。

そもそも特養・老健は前回、前々回で報酬が引き下げられたために赤字化したため、今回は引き上げられたもの。

「収支差率」で報酬を上げ下げするのは業界全体の健全な発展を妨げるものではないかと思われます。

厚労省には、「収支差率」で報酬を上げ下げするのではなく、サービス全体の必要性から報酬を決めて頂けないものかと考えます。

今回は、2024年度の介護報酬改定の概要に示された、4つの施策について解説していきます。

1.地域包括ケアシステムの深化・推進のための各事業者の施策とは

今回の改定は医療介護同時改定ということもあり、今後増加する認知症高齢者や単身高齢者、医療ニーズの高い中重度者のための医療と介護の連携を視点とした項目が多く盛り込まれています。

そのため、
〇質の高い公正中立なケアマネジメント
〇地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取り組み
〇医療と介護の連携の推進
(特に在宅医療ニーズへの対応強化、高齢者施設における医療ニーズへの対応強化)
〇看取りへの対応強化
〇感染症や災害への対応力向上
〇高齢者虐待防止の推進
〇認知症対応力向上
〇福祉用具貸与・特定福祉用具販売の見直し
といった、必要なサービスが切れ目なく提供されるよう、地域の実情にあった効率的な取り組みを推進するよう謳っています。

具体的には、
〇介護保険施設に対して打ち出された、協力医療機関と具体的な連携内容規定の義務付け
〇協力医療機関との定期的な会議を評価する協力医療機関連携加算の新設
〇高齢者施設等感染対策向上加算の新設
〇医療と介護のリハビリの連続性を担保するための訪問リハ、通所リハ退院時共同指導加算の新設
〇ショートステイへの看取り連携体制加算の新設
〇特定施設への夜間看護体制加算の再編と医療的ケアが必要な重度者の受入れを評価する入居継続支援加算の緩和
〇訪問看護への緊急時訪問看護加算の見直し、ターマナルケア加算の見直し、専門管理加算の新設
〇訪問リハへの認知症短期集中リハビリテーション実施加算の新設
〇認知症対応グループホームへの認知症チームケア推進加算の新設、医療連携体制加算の見直し
〇小多機、看多機への総合マネジメント体制強化加算、認知症加算の見直し、緊急時対応加算の見直し
〇定巡、夜間対応訪問介護の総合マネジメント体制強化加算の見直し
〇通所介護の認知症加算の算定緩和
〇訪問介護への認知症専門ケア加算の要件変更
〇訪問入浴の看取り連携体制加算の新設
と言ったところが見直されました。

各事業者は今後はより一層加算獲得に努め、収入アップを図る必要がありそうですね。

2.自立支援・重度化防止に向けた対応

高齢者の自立支援・重度化防止という介護保険制度の趣旨に従い、多職種連携やデータの活用を推進するため、
〇リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取り組みの推進
〇自立支援・重度化防止に係る取り組みの推進
〇LIFEを活用した質の高い介護の提供
が謳われました。

具体的には
〇LIFEの効果を明確に示すために、入力項目、データ提出のタイミングが見直され、更に4月には利便性を向上させた新システムへの移行、操作性の改善が実施される見込みです。
〇訪問系及びショートステイへの口腔連携強化加算、介護保険施設への退所時栄養情報連携加算の新設
と言ったところが見直されています。

3.良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり

介護人材不足の中で、さらなる介護サービスの質の向上を図るため、処遇改善や生産性向上による職場環境の改善に向けた先進的な取り組みを推進するため、
〇介護職員への処遇改善
〇生産性向上等を通じた働きやすい職場環境づくり
〇効率的なサービス提供の推進
が打ち出されました。

具体的には、
〇2024年6月から介護職員等処遇改善加算の一本化
〇介護施設及び居住系施設、ショートステイ、多機能系サービスでの業務改善の義務化と、ICT機器導入やデータ提出などを要件とする生産性向上推進体制加算の創設
〇特定施設での生産性向上の取り組みを前提とする人員基準の緩和
等が実施されます。

4.制度の安定性・持続可能性の確保

介護保険制度の安定性・持続可能性を高め、全ての世代にとって安心できる制度を構築するために、
〇評価の適正化・重点化
〇報酬の整理・簡素化
が謳われました。

こちらについては、具体的な項目はないですが、将来における介護・障害一本化も視野に入れた提言が、次回もしくは次々回になされるのではないかと考えられます。

以上についてが、今回の改定の概要です。
いずれにせよ、事業者にとっては「加算」取得重要性、柔軟な対応がより必要になってくるのではないかと思われます。

次回からは、各事業について、改定内容の解説を行っていきます。

介護の三ツ星コンシェルジュ

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