2024年度介護報酬改定解説④ 制度の安定性・持続可能性の確保
介護保険制度については給付額が年々増加していることもあり、その持続性を危ぶむ声が以前よりありました。
2024年の介護報酬改定では制度の持続性確保を目的にした給付の見直しなどの取り組みが導入されています。
同一建物減算の強化
その一つが、訪問介護の同一建物減算の強化です。
これまで事業所と同一の建物、同一の敷地または隣接地の建物に住む利用者にサービス提供する場合は、その人数などに応じ10%ないし15%の減算が適用されていました。
今回の改定では、それに加えて「6ヵ月間の総サービス提供数のうち、事業所と同一敷地または隣接地の建物に居住する利用者の割合が90%以上で、かつ49人以下の場合は12%減算」という新規定が設けられました。
居宅介護支援事業所についても同一建物減算が新たに盛り込まれました。
事業所がある建物と同一の建物、同一の敷地内または隣接する敷地内の建物に居住する利用者へのケアマネジメントは5%の減算となります。
また、この条件に該当しない建物でも、1ヵ月の利用者のうち20人が同じ建物の居住者だった場合には5%の減算になります。これは老人ホームなどに限らず、一般のマンションにも適用されますので、注意が必要です。
なお、隣接地であっても間に川や横断不可能な道路などがあって、行き来に際して大きく迂回をしなくてはならない場合などは同一建物減算の対象外となる可能性があります。
保険者に一度確認をしてみることをお勧めします。
短期入所の長期間利用を抑制
短期入所生活介護については、数ヵ月間などの長期間利用する者でベッドがふさがり、緊急・短期で利用したい人の受け皿としての役割を果たしていないケースがあることが、以前より指摘されていました。
そこで、本来の役割から外れた長期利用を抑制することを目的に、61日以上の利用については報酬を引き下げて介護老人福祉施設と同じ単位数としました。
定期巡回に夜間のみの報酬新設
定期巡回・随時対応型訪問介護看護について、夜間のみサービスが必要とする利用者向けの報酬が新設されました。
利用者の要介護度に関係なく基本報酬は月989単位で、これに定期巡回や随時訪問を実施した場合の出来高が加わります。
なお、この取り組み背景には、将来的に定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護の両サービスを統合させたいという国の意向があります。
その他
介護予防通所リハビリテーションの報酬も見直されました。
月225単位の運動器機能向上加算を廃止して基本報酬に包括化したほか、選択的サービス複数実施加算(Ⅰ)・(Ⅱ)も廃止となりました。
一方で1ヵ月480単位の「一体的サービス提供加算」が算定されています。
このほかにも、介護老人保健施設の認知症情報提供加算、地域連携診療計画情報提供加算が廃止されました。理由について厚生労働省は「算定実績等を踏まえ」としています。
介護医療院の長期療養生活意向加算も廃止となっています。
介護の三ツ星コンシェルジュ