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職務は「地域を散歩すること」 介護事業所の地域共生に必要な意識とは

多くの介護事業所で「地域との共生」を重要視しています。

地域の人たちのために介護や認知症、フレイルの予防などをテーマにしたセミナー・イベントを開催しているところも多いと思います。しかし、本当にその取り組みで、地域に溶け込めているでしょうか。

名古屋市に、現職介護スタッフによるアイドルユニットグループの結成などユニークな取り組みで度々メディアにも登場している有名な社会福祉法人があります。

この法人でも地域との共生を重要な活動テーマのひとつとしていますが、その具体的な方法が一風変わっています。

それは「職員が職場周辺を散歩すること」

この法人の人事制度では職員を1等級から7等級に分けています(7等級が最も上です)が、3等級以上の職員については「地域をぶらぶらすること」を職務としています。

この理由について法人の理事は「私たちは、つい介護や医療の専門家として地域に溶け込もうとしがちです。しかし、地域がそれを欲していなければ何の意味もありません。地域が何を必要としているのか把握するのが目的です」と語ります。

 例えば、地域の喫緊の課題は「今度の日曜日の河原の清掃活動の人手が足りない」かもしれません。

この場合、必要なのは介護や医療の専門職ではありません。
そんなところに「介護や医療でお困りのことがあったら、声をかけて下さい」と呼び掛けても、塩対応をされるのがオチでしょう。

 「まずは、地域をブラブラし、散歩や井戸端会議をしているような人たちに挨拶をし、仲良くなることが先決です。そうして関係性ができた上で『介護・医療で困っている』という声がでたところに『自分は、その分野の専門職でして』と名乗ることに意味があるのです」

 また、この法人では「地域福祉実践事例発表会」を定期的に行っています。

3月24日には第21回を開催したばかりです。
元々は法人内で各事業部門の報告会を開催していましたが「どうしても内輪だけで満足して終わってしまう」という反省から、前々回より一般市民を招いて公開する形式にしています。

 さて、介護事業者や業界団体がこうした事例発表会・研究発表会を開催する場合、会の権威付けや発表者のモチベーションアップを考えて、「なるべく大きくて有名な会場」で「なるべく多くの人数を集めて」開催しがちです。

 しかし、この「地域福祉実践事例発表会」は学校の体育館が会場です。参加者も発表者や法人関係者を除けば80~100名程度と非常にコンパクトなのが特徴です。

その理由も「地域課題の解決」にあります。この法人の事業展開地域は車で15分程度の範囲内に収まっています。

そうした狭い範囲内でも介護に関するニーズは地域により全く異なるそうです。
「広い範囲から多くの人を集めても、その人たち全てに刺さる話ができなかったら意味がありません。地域の人たちに対し『私たちはこんなことができます』ということを知ってもらうために、毎回学区を変えて実施しています」

 このように、介護事業所が地域の人たちに溶け込むには、まず「その地域が何を必要としているのか」をしっかりと把握することが重要です。

その結果によっては介護や医療とは全く違う視点からのアプローチが必要になるかもしれません。

そして、そうなった場合には、法人や事業所の代表者ではなく、若手スタッフが地域とのパイプ役になった方がいいケースもあります。
「専門家が小難しいことを話すのが、結果として逆ブランディングになってしまう可能性もあります」とこの法人では語っていました。

介護の三ツ星コンシェルジュ

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