介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

「2025年問題」って何? その内容と介護業界に与える影響②

 前回のコラムでは「2025年問題とは何か」「社会に与える具体的な影響とは」について解説しました。
今回は、介護業界に与える影響について詳しく考察します。

 まず、労働力不足ですが、現在でも人手不足に悩まされている介護業界にとっては今以上に深刻な状況になることは想像に難くありません。

介護事業は他の飲食や小売業と異なり、介護保険サービスについては事業者が自由に価格を設定できません。

人材確保のために給与を引き上げて、人件費の増加分を値上げでカバーするという手法を取れませんので、他産業との賃金格差は広がり、人材獲得競争に負けるケースが増えて来るものと思われます。

特に、介護保険外の収入がほとんどない通所系・訪問系サービスではそれが顕著になるでしょう。

現在でも高齢者や外国人人材の活用、ICT機器の活用などの対策を取っている事業者は多いかと思いますが、それらについてさらに推し進めていく必要があるでしょう。

また、現在では人材募集に際してTikTokやinstagramなどのSNSを活用し、これまで介護に興味の無かった若い層などにアピールをする手法も珍しくなくなっています。

こうした中では、単に「SNSを使っています」だけでは差別化できません。

今後は「SNSの『バズらせ方』を知っている」など、介護とは全く無関係のスキルや経験を有する人材が介護業界で求められることになるケースも考えられます。

さて、2025年問題は多くの業界にとって、「消費活動の中心となる現役世代の絶対数が減少することによるマーケットの縮小」という課題が発生します。

しかし、介護業界については利用者として想定される後期高齢者の増加によるマーケットの拡大が見込めます。 

これは本来であればビジネス的には好機なのですが、労働人口が減少する中で増加するニーズに対応しなくてはならないという非常に難しい状況となることが予想されます。

こうした中で、介護事業者が手がけるサービスの内容についても変化を余儀なくされることが考えられます。

後期高齢者の割合が増えていくのですから、介護現場でのニーズも認知症ケアや医療対応、ターミナルケアなど、重度者向けの比率が高くなることが考えられます。

例えば、介護予防事業も手掛けている事業者の場合には、そちらを担当している人材を重度者向けのサービス担当に回すなどの組織変更も必要かもしれません。

それに合わせてスタッフには新たな資格を取得してもらう、それに関する費用をサポートするなどの対応策も求められるでしょう。

 さて、介護事業者の中には2025年、さらにそれ以降を見据えて高齢者施設の新規開設を進めているところもあると思います。

しかし、団塊の世代以降の出生数は団塊の世代のそれを下回っています。
つまり団塊の世代の数をベースに介護施設を整備してしまうと将来「供給過多」に陥る可能性があるのです。

団塊の世代以降で年間の出生数が団塊の世代並みになるのは、1971~74年生まれのいわゆる「団塊ジュニア世代」まで待たなくてはなりません。

つまり、彼らが後期高齢者となる2046~49年までの約20年間は、介護事業者にとっては空室の増加など厳しい経営環境となることが予想されます。

長期的な視野で介護事業を行う場合には、その間を乗り切れるだけの体力も必要になるでしょう。

また、介護事業所については、一時的に他の形態としても運営ができるような仕様にするなど、環境の変化に柔軟に対応できるビジネスモデルの構築なども考えなくてはいけないでしょう。

介護の三ツ星コンシェルジュ

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