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外国人人材の日本語教育の問題点とは? 「外国人向け教材」は果たして効果的か

大手介護グループが主催する、外国人介護人材をテーマにしたシンポジウムが奈良県で開催されました。

 新型コロナウイルス感染症による海外との往来制限がなくなり、技能実習生や特定技能外国人の入国者数も急速に増加しています。
こうした中で、介護事業者側の外国人受け入れ体制作りの必要性などが改めて問われています。

今回は、このシンポジウムでのやりとりを元に、外国人人材の受け入れのあり方について検証してみましょう。

登壇者の1人である、関西の大手医療・介護グループの人事・教育部門担当者は「日本語能力N4レベルで来日しても、N3レベル程度までは日本で生活・就労していれば概ね到達する。しかし、その先、N2レベルにまでなるには、日本語学校など専門的な教育機関との連携・教育が必要になる」と、来日後にしっかりとした教育を受ける機会を受け入れ側で用意する必要性について言及しました。

 監理団体などは介護事業者に対して「来日前に日本語教育をしっかり行っています」とアピールすることが大半です。
しかし、実際には「それでは不十分」という声が登壇者からあがりました。

高齢者施設も運営している寺院の住職は、過去にEPAで来日予定の外国人たちを集めて2週間の合宿を行った経験があります。しかし「母国で日本語教育を受けてきたと言っても、実際には正確な『あいうえお』ですら発声できない人も多い。現地で現地の人が行う教育には限界がある」とのことです。

 これについて、日本の看護師資格を保有し、ベトナムの医療短大の看護学部で教鞭をとる女性(ベトナム人)は「介護自体が社会に根付いていないベトナムには介護の専門家がいない。
高齢者施設を実際に見たことがない看護の専門家が介護を教えているのが現実」「日本の介護に関するテキストを私が翻訳して、現地の教員に見せているが、理解できないケースも多い」語り、やはり現地での教育だけでは不十分と指摘しました。

これらの発言から、見えて来るものは何でしょうか。
まず、「現地の日本語教育だけでは不十分」という点です。少なくとも現地で日本人から直接日本語教育を受けていないと、就労するのに十分な日本語力は身に付いていないと考えた方がいいでしょう。
先に紹介した住職は「合宿の1週間目はほぼ日本語の勉強。1日6時間ぐらいした」と語ります。
受け入れ企業側でも1日数時間は日本語を学ぶ時間を設ける必要があるでしょう。

 そして「日本人と一緒に学ぶ環境の構築」です。
ベトナム人女性は「例えば初任者研修講座や介護福祉士国家試験対策講座なども、日本人の講師から日本語で教えてもらうから、業務や試験合格に必要なだけの日本語が身に付く」と主張します。
教材も外国人向けにふり仮名をふったり、平易な日本語に置き換えたりするのではなく、日本人と同じ教材を使うべきと訴えます。
「外国人向けの教材だと『易しく学べる』が『学ぶ努力』につながらない。また人によっては『差別されている』と感じることもある」

 そして、日本人なら文字や音声だけで十分に伝わることでも、そこに外国人が加わった場合には、イラストや図表、身振り手振りなどを使わないと伝わらないこともあります。受け入れ側は「外国人を教える」ことに精通した、講師の養成・確保も考えなくてはなりません。

現状では、介護業界でのこうした受け入れ態勢の整備具合は各社バラバラです。
住職は「受け入れ後の日本語教育の水準を一定化しないといけない。
外国人は来日前にSNS等を使って情報交換をしている。日本語を含めた来日後のフォロー体制がしっかりした事業者に人気が集中することになるだろう」と警鐘を発しました。

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