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介護事業者の収支差率0.4ポイント下落 次期介護報酬改定に与える影響は?①

11月10日、厚生労働省は2023年度の介護事業経営実態調査の結果を発表しました。
この調査は、次期介護報酬改定に必要な基礎資料を得ることを目的に、全ての介護保険サービスを対象として、収入・支出、職員配置・給与などの経営状況を調査するものです。

今回は、2022年度の状況について、無作為抽出された3万3177事業所を対象に実施されました。
このうち1万6008事業所が回答しています。

全サービス平均の収支差率は+2.4%となりました。
2021年度比で0.4ポイント下落しており、介護サービス事業者の経営状況が悪化していることが伺えます。この背景には、ここ数年の電気・ガスなどのエネルギーコストや、ガソリン代、食材費の上昇などが大きく影響しているものと予想されます。
また長引く人材不足を受け、求人費など人材関連のコストが上昇していることも大きく影響しているものと思われます。

では、この収支差率を介護保険サービスごとに見ていきましょう。
収支差率が高いサービストップ5は以下の通りです(カッコ内は2021年度との比較・以下同じ)

① 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 +11.0%(+2.9ポイント)
② 夜間対応型訪問介護        +9.9%(+6.1ポイント)
③ 訪問リハビリテーション      +9.1%(+9.5ポイント)
④ 訪問介護             +7.8%(+2.5ポイント)
⑤ 福祉用具貸与           +6.4%(+3.0ポイント)

 一方で、低いサービスは以下の通りです

① 介護老人保健施設         −1.1%(−2.6ポイント)
② 地域密着型介護老人福祉施設    −1.1%(−2.2ポイント)
③ 介護老人福祉施設         −1.0%(−2.2ポイント)
④ 介護医療院            +0.4%(−4.8ポイント)
⑤ 通所介護             +1.5%(+0.8ポイント)

非常にはっきりとした傾向がでています。収支差率が低いのは、施設系サービスなど「高齢者が住む・長時間過ごすための拠点」を設けなければいけないところです。
水光熱費などランニングコスト上昇の影響が、訪問系サービスに比べ非常に大きいことが伺えます。
また、新型コロナウイルス感染症への対応コストなども経営状況に影響を与えたと思われます。

そして、収支差率が低いサービスの中でも通所介護以外は前年度よりも収支差率が悪化しています。
特に①~③は、前年度は収支差率がプラスだったわけですから、いかに短期間で経営状況が悪化したかがわかります。
ほかにも、前年度より収支差率が悪化した介護サービスとしては、短期入所生活介護、特定施設入居者生活介護、小規模多機能生活介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護などがあります。
状況としては同様と言えるでしょう。

今回の調査結果は、来年4月に実施される介護報酬改定において、具体的な基本単位や加算の単位を決定する上で参考とされます。
厚生労働省は、報酬全体はプラス改定という方向性で調整に入っているそうです。
しかし、収支差率の低いサービスを救済する代わりに、高いサービスの報酬については抑制するなどの方策をとる可能性も考えられます。
これまで通りの改定スケジュールならば、新報酬額の発表は来年1月初頭で、年内いっぱいは議論が続けられます。
その動向が注目されます。

次回のコラムでも、今回の介護事業経営実態調査の結果について詳しく深掘りしていきましょう。

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