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高齢者住宅紹介事業者が株式上場 消費者の利便性などはどう変わる?

10月26日、大阪に本社がある高齢者住宅入居相談事業者
(以下:相談業者)が株式を上場しました。

相談業を本業とする会社の上場は今回が初のケースです。
上場の目的などについて社長に話を聞きました。

業務品質に問題のある事業者の存在

「相談業の認知度向上と、健全な発展が目的です」と社長は上場の目的を語ります。
 相談業は、有料老人ホームの数が増え始めた2005年頃から大都市圏を中心に数が増加しました。高齢者住宅運営会社の業界団体によると「首都圏では、高齢者住宅の新規入居者の約半数が相談業からによるもの」と言われており、今や高齢者住宅にとっては欠かすことができない存在となっています。
 しかし、相談業は運営に際して何ら法的な規制も受けず、監督する省庁や機関もありません。開業に際しては許認可・登録・届出が不要で、誰でもすぐに事業を始められます。

そのため、業務品質に問題のある事業者の存在も指摘されていました。
こうした中で、首都圏や関西では、相談業者間で一般社団法人や私的なネットワークをつくり、業務品質の向上などに向けた勉強会を開催するなどの取組みも行われていますが、全国的な動きにまでは広がっていないのが現状です。

 こうした中で、上場企業が誕生したことで「相談業」という存在が広く世の中に知られることになりました。投資家やアナリストなども注目します。
当然、事業の透明性や消費者保護の取り組みなどについても厳しい目が注がれることになります。そのことが結果的に相談業全体の健全な発展につながると思われます。

相談業においては事業規模が重要。

 また、当然ながら、上場するにはそれなりの事業規模が必要になります。今回上場した会社はスタッフ数78名(2023年8月末時点)。現在、大阪・東京・福岡の3拠点で展開しています。相談業者の中には、こうした「多くのスタッフ・多店舗展開」をしている会社もいくつかありますが、その一方でスタッフ数名という中小・零細事業者も少なくありません。
中には個人が法人化もしないで看板も出さずに事業を行っているケースもあります。

 これについて社長は、「少ないスタッフでは、そこに集まる高齢者住宅の情報量も自然に少なくなる。それは相談者側の選択肢が減ることにつながる」と、情報が武器である相談業においては、事業規模が重要であると指摘します。
また「小規模になると、具体的な高齢者住宅の提案に際して『そこの経営者と仲がいいから』などの個人的な好みが入り込む余地が多くなる」と、事業の公平性の面で課題が生じる可能性があるとも指摘しています。
ちなみにこの会社では「誰が、どのようなニーズに対し、どこの高齢者住宅を紹介したか」を相互チェックできる体制を整えているそうです。

 また、相談業者の悩みのひとつが、「ある程度力を付けてきたスタッフが、独立したり同業他社に引き抜かれたりするケースが多い」ということ。それが事業規模の拡大が難しいことの一因になっていました。しかし、このように「大規模で事業を行うことのメリット=個人・少人数で行うことの難しさ」をスタッフが十分に理解することが、独立の防止にもつながっていると言えます。

いずれにせよ、上場企業が誕生したことは相談業界にとっては大きなニュースです。

一般的な賃貸住宅の仲介事業では、全国展開をするチェーンが複数存在するほか、各地の事業者が情報を共有し
「九州の店舗にいながら、北海道の住宅を探す」ということもできます。

今後、高齢者住宅探しにおいても、同様のネットワーク構築などといった
消費者の利便性向上に向けた第一歩になるかもれません。

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