介護現場でのAI活用のメリット・デメリットと実用例
- 掲載日 : 2023年10月24日
- カテゴリ : 制度改正や介護情報 > 介護業界 嚙み砕き知識・ニュース
- タグ : 認知症、 作業効率化、 業務改善
- ライター : しん|介護士ブロガー
こんにちは!「しんぶろぐ〜介護ノート~」を運営しているしん(@shinbloger)です。
簡単に自己紹介させてください。
・13年以上の介護経験がある現役の介護士です。
・介護福祉士と福祉用具専門相談員の資格を持っています。
・認知症デイの相談員4年以上の経験があります。
今回は、介護現場におけるAIの活用について記事を書きました。3分ほどで読める記事なので介護職の方は読んでみてください。
はじめに: 介護とAIの融合
近年、テクノロジーの進化とともに、AI(人工知能)がさまざまな分野で活躍しています。その中でも、介護の現場でのAIの活用が注目されています。でも、AIと介護って、一体どう組み合わせるのでしょうか?
まず、介護の現場は多くの課題を抱えています。人手不足、高齢者の増加、そして介護スタッフの負担軽減。これらの課題を解決するために、AI技術が大きな役割を果たします。
例えば、AIロボットは、高齢者の移動や生活支援を手伝ってくれます。また、センサーやカメラを使ったモニタリングシステムは、高齢者の安全を守るための大切なツールとなってくれるでしょう。
さらに、AIはデータ解析のプロ。高齢者の健康状態や生活リズムを分析して、最適なケアプランを提案することも可能です。ケアマネの業務を補助してくれるでしょう。
もちろん、AIがすべての作業の代わりになるわけではありません。大切なのは、人間がAIを活用し、より良い介護を提供すること。AIはツールの一つとして、介護の現場をサポートしてくれる存在と言えるでしょう。
介護現場におけるAI活用のメリット
つづいて、介護現場でAIを活用するメリットを紹介します。
●デスクワークの効率化
介護の現場では、地味にデスクワークが多くて、業務負担になっています。AIを活用することで、このようなデスクワークの効率化が進められています。
たとえば、シフト作成です。
AIは、スタッフの希望や過去の勤務履歴、施設のニーズに基づいて、最適なシフトを自動で作成することができます。これにより、シフト調整の手間が大幅に削減され、スタッフの満足度も向上します。
他にも、介護記録の補助入力があります。
介護の現場での記録は非常に重要ですが、手書きや入力作業は時間がかかるものです。AIを活用することで、高齢者の行動や健康状態を自動で検知し、介護記録を補助的に入力することができます。これにより、記録の正確性が向上し、スタッフの業務負担も軽減されます。
安全性の向上
AI搭載のセンサーやカメラは、高齢者の動きや行動を24時間見守ることができます。異常な動きや転倒をすぐに検知し、知らせてくれます。
健康状態のモニタリング
AIは、高齢者の健康データをリアルタイムで分析することができます。これにより、健康状態の変化や異常を早期にキャッチし、適切なケアを提供することが可能となります。
高齢者とのコミュニケーション
対話機能を持つAIロボットは、高齢者との日常的なコミュニケーションをサポートします。これにより、高齢者の孤独感を軽減し、心のケアも行えるようになります。
また、コミュニケーションは脳の活性化に繋がり、認知症の進行を遅らせる効果があると言われています。AIロボットが日常のリマインダーやアラームとして機能することで、高齢者の生活リズムを整える手助けになることも期待できます。
AI活用により、上記のようなメリットが考えられます。
介護現場におけるAI活用のデメリット
AI技術の導入は、介護の現場に多くのメリットをもたらしていますが、一方でデメリットや懸念点もあります。
人間の感覚の代替
AIやロボットは高度な技術を持っていますが、人間の感覚や感情、直感を完全に代替することは難しいです。高齢者とのコミュニケーションやケアにおいて、人間の温かみや共感は欠かせない要素です。
高額な導入コスト
AI技術の導入には、初期投資や維持費用がかかります。特に小規模な施設や事業所にとっては、負担となることが考えられます。
スキルの低下
AIに頼りすぎることで、介護スタッフのスキルや経験が低下する恐れがあります。定期的な研修や実践を通じて、スキルの維持・向上を図る必要があります。
デメリットを理解し、それを最小限に抑えるための対策が必要でしょう。
介護現場のAIの活用事例
それでは、2023年10月現在、介護現場で実際に使われてるAI活用事例を紹介します。
送迎をAIで効率化するサービス「DRIVEBOSS」
パナソニックカーエレクトロニクスが作った「DRIVEBOSS」というサービスは、AIを使って介護施設の送迎をもっとスムーズにするものです。具体的には、利用者の状態を見て、AIが最適な送迎のルートや計画を作ってくれます。
僕も経験がありますが、送迎表の作成はかなりの時間がかかります。送迎ルートだけでなく、各利用者の要望や訪問時の介助量、道路の込み具合などを考慮して作成する必要があるからです。
でも、「DRIVEBOSS」を使えば、パソコンでこれらのことを簡単に管理できるので、ミスも少なくなります。
介護の人手不足を補う「AIさくらさん」
ティファナ・ドットコムが作った「AIさくらさん」は、音声での会話ができる接客システムです。このシステムは、もともとは会社のヘルプデスクやコールセンターなどで使われるものですが、介護施設でも役立つと期待されています。
AIさくらさんは、高齢者との会話も得意で、クイズを出したり、雑談をしたりできます。さらに、カメラとつなげれば、倒れている人やその人の表情を見て、すぐに対応することも可能です。
今の時代、人が足りない中で、こんなAIがあれば、スタッフの仕事が楽になり、施設ももっと安全になると思います。
ケアプラン作成の支援「SOIN(そわん)」
株式会社シーディーアイによって開発された、AIマネジメントサービス「SOIN(そわん)」は、時間のかかるケアプラン作成を支援するシステムです。
介護支援事業所でのケアプラン作成は、利用者のニーズに合わせて作成するため時間のかかる作業です。でも、株式会社シーディーアイが作った「SOIN(そわん)」というAIサービスを使えば、ケアプラン作成の時間を短縮できます。
「SOIN(そわん)」は、過去のたくさんの経験を学んだAIが、最適なケアプランを提案してくれるんです。
高齢者の歩行分析AI「トルト」
株式会社エクサホームケアが開発した歩行分析AI「トルト」は、高齢者の歩行状態を解析して、転倒リスクや改善策を提案してくれるソフトです。
後ろ姿を5秒動画撮影するだけで、転倒リスクやリズム、スピード、左右差などを2分ほどで分析してくれて、改善案も提案してくれます。
僕も使ったことがありますが、高齢者からの評判もよく、リハビリのモチベーションアップにもつながっていました。実際に、歩行状態が改善して、5mしか歩けなかった方が、50m歩けるようになった事例もあります。
また、ケアマネ営業にも効果的で、リハビリの専門職がいなくてもそれに近い効果が期待できるのも魅力です。
現役介護職が考えるAIを活用すべき事例
僕は、日々介護の現場で働いていて、さまざまな課題に直面しています。そんな中で、特にAIの力を借りたいと感じる事例をいくつか紹介します。
腰の負担を軽減するAIロボット
身体介護は、介護職員の腰への負担が大きい作業の一つです。事実、腰痛が原因で介護職を辞めていく人も少なくないです。
AI技術を活用した補助ツールやロボットを導入することで、介護職員の腰痛のリスクを減少させることができるはずです。
認知症高齢者と会話をするAIロボット
認知症の高齢者とのコミュニケーションは、時に大変です。同じことを何度も質問されて疲弊してしまう介護職の方もしばしば。AIロボットが、過去のデータから利用者の好みを分析して、レクやクイズ、会話の一部を代行してくれると介護職の負担はかなり軽減できるはずです。
徘徊高齢者を見守るAIツール
徘徊する高齢者の安全確保は、介護施設や家庭での大きな懸念事項の一つです。AIカメラやセンサーを使用して、高齢者の動きをリアルタイムで監視し、異常を感知した際にはすぐにアラートを出すなどの対応があれば、かなりの負担軽減になります。
まとめ:AIを活用した質の高い介護の提供
近年のAI技術の進化は、介護の現場に新しい風を吹き込んでいます。それは、介護の現場でも徐々に進んできています。
高齢者との会話AI、歩行分析AI、見守りセンサーAI。これらの技術の導入により、介護の質の向上。介護職員の負担も大きく軽減されることが期待されています。
未来の介護は、AIの力を借りて、より人間らしい温かみのあるサービスを提供する方向へと進化していくことと思います。
今回は以上になります。