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「コロナにかかって死んだ方がまし‼」 入居者の一言で、外出レクなど日常生活回復

「こんな暮らしが続くなら、外に出てコロナにかかって死んだ方がいい!」
 直接に聞いたわけではありませんが、久々に、私の心にドンと響いたセリフでした。

これを発したのは、ある有料老人ホームの入居者です。2020年初頭から日本で新型コロナウイルス感染症が広まったことで、国民は外出や会食の自粛など、多くの我慢を強いられました。
特に、高齢者施設では生活に厳しい制限がかけられました。

 例えば、スタッフに「通勤や日常的な買い物以外での県を越えた移動禁止」「家族以外との会食禁止」「自宅でもマスク着用」などのルールを課したホームもありました。
「夏休みを一週間もらえたが、自宅からほとんど出ることができず、逆にストレスを貯めてしまった」というスタッフもいたそうです。

 しかし、こうした職場のルールについては、「職場にいない私的な時間についても徹底させる」には限界があります。
正直なところ、「職場には内緒で飲み会や旅行に行っていた」というスタッフもきっといたのではないでしょうか。

このように、こっそりと息抜きをできたスタッフに対し、入居者はそうはいきません。
外出は禁止、家族との面会はガラス越しかオンライン、レクリエーションやイベントは中止という生活が続きました。食事も部屋での孤食となり、限られたスタッフ以外との会話の機会すら失われてしまったという入居者もいます。
あえて言葉を選ばずに言えば「まるで独房のような生活」です。

 高齢者に残された時間は多くありません。「今年はお花見に行けなかったが、来年行けばいい」というわけにはいかないのが現実です。そうした「極端に行動を制限された生活」と「残された時間の少なさ」から来る焦りやストレスが、冒頭の悲痛な叫びにつながったと言えるでしょう。

このホームは、要介護でなくても入居できることもあり、もともと「自由な暮らし」を掲げていました。外出や飲酒・喫煙にも特に制限を設けず、それまでの自宅と同様の生活を送ることができます。
そうした暮らしを求めて入居をした人にとっては、数々の制限がある生活は大きなストレスになったことでしょう。
入居者のこの叫びを聞いたホームでは、まだ世間ではコロナ禍が続く中でも外出を伴うレクなどを再開させたそうです。ホームが撮影した写真には、青空の下でマスクをせずに満面の笑顔を見せる入居者が大勢写っていました。

コロナは今年の5月に感染症区分が5類となり、制限や特別な対応は必要なくなりました。
しかし、先日テレビで放映された高齢者施設では、家族の面会を建物の外からガラス越しに行っていました。「感染者がゼロになったわけではないので、まだまだ気を引き締めて…」と施設側ではコメントしていました。

しかし、コロナに限らずウイルス性感染症の感染者数がゼロになることはありません(天然痘は別ですが)。どこかで日常生活に戻すための舵をきらなくはなりません。
5類への移行は、その絶好のタイミングだったと思うのですが…ちなみに、大阪府内のある大手歯科医院では5類移行を期に、歯科医師・歯科衛生士以外のスタッフのマスクを外しました。
患者にも着用を求めていません。

冒頭の入居者は自分の意思をはっきり口にすることが可能でしたので、コロナに対するホーム全体の意識を変えることができました。
しかし、入居者の中には、そうした意思表示が十分にできない人が少なくありません。
「自分たちの今の対応が、本当に入居者のためになっているのか」「やみくもに規制・制限をする以外に、有効な方法はないのだろうか」などといった点を改めて考えてしてみてはどうでしょうか?

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