介護以外について

退職代行サービス 医療福祉の利用がトップ 「面談」などの無理な引き留め多いのが理由?

 大阪で退職代行サービスを手掛けている会社によると、これまでサービスを提供した人の勤務先(200社)を業種別にみると「医療福祉」が最も多く、全体の22%を占めているということです。

なぜ、医療福祉業界で働く人は退職代行サービスを利用するのでしょうか?
今回はこの点を検証してみましょう。

 「職業選択の自由」は日本国憲法にも明記されていますから、退職をしたければその旨を職場に申し出れば済む話です。
実際の退職の手続きや、何日前までに申し出るかなどといった細かいルールは職場ごとに違うでしょうが、退職自体は何も難しいことはないはずです。

しかし、実際に退職代行がビジネスとして成り立っているということは、それが難しいケースが少なくないことが伺えます。

 その理由はとしては「物理的に本人が退職を申し出ることができない」「物理的には可能だが、自分で退職を申し出たくない」の2つが考えられます。

 前者の場合、多いと思われるのは「メンタル不調などで、出社をすることができない」パターンです。「上司など退職を申し出る相手との人間関係が完全に破綻しており、会話すら難しい」などといったケースも該当するでしょう。申し出を含めて退職に必要な様々な手続きを行うことが難しいため、必然的に第三者の手を借りることになります。

 後者の場合は、さらに①引き止められてなかなか退社させてくれない、
②退社に際して難しい条件を課せられる、などいくつかのパターンに分けられます。
 ②は「営業ノルマが未達成なのに退職は許されない」「今のプロジェクトが終了するまでは在職してくれないと困る」などがありますが、介護職では少ないでしょう。
介護職の場合は「後任が採用できるまでは退職させられない」いうケースが考えられます。

介護職の場合は①が多いのではないでしょうか、どこの職場も人手不足で、かつ新規採用も難しい状況ですから、退職者が出るのは非常に困ります。
「辞めます」と言ってきた人には「面談しよう」などと必死に引き留めにかかるのが普通です。

もちろん「何となく辞めたいと思っている」といった場合には、面談が効果を発揮することもあります。しかし、「給与が安い」「職場の方針が合わない」など、面談したぐらいではどうにもならない理由での退職意向にも「とりあえず面談」をして「もう少し頑張ってみたらどうか」などとなだめすかし、勤務を続けさせているケースが多いのではないでしょうか。

しかし、「退職したい理由」に対しては抜本的な対策を講じていないのですから、本人のモチベーションは下がったままです。
この先、定期的に「辞めます」と申し出てくることが考えられます。

 こんな状態がダラダラ続くのは、働く本人にとって苦痛でしかありません。無意味な引き留めを避けるために、第三者を介してドライに退職しようという意識がはたらきます。

 いずれにせよ、従業員が退職代行を利用するのは、職場の間との信頼関係が破綻してしまっている可能性が高いといえます。介護業界の利用割合が高いという事実を、事業者は危機感をもってとらえるべきではないでしょうか。

介護・福祉事業者は「理念」という言葉を口癖のように語り、理念の元に全従業員のベクトルが1つになっていることを強調します。
しかし、どれだけ面談などで密なコミュニケーションを図っても、結果として「上からの理念を押し付けるだけ」になってしまっているかもしれません。

現場スタッフなどからの要望や提案に対して「ゼロ回答」をしてしまっているケースが多くないか、振り返って考えてみる必要もあるかもしれません。
 

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