老人ホーム選びの知識

失敗しない老人ホームの選び方~1日の過ごし方から自身に合うホームを選ぶ~

老人ホーム入居のメリット・デメリットとは

老人ホーム入居のメリットについて、皆さんはどうお考えですか?
メリットとして大きいのは、「入居者にとって安心・安全な生活が提供される」。ご家族にとっては「介護からの解放」ではないでしょうか。
デメリットとして大きいのは「自由気ままな生活」から「規則正しい集団生活」への生活環境の変化です。

「自由気ままな生活」と「安心・安全な生活」は反比例すると考えて下さい。
老人ホームに入居するという事は、気ままな生活に別れつげ、集団生活を送るということです。
ですから、「何のために入居するのか」「楽しみは何か」「居心地は良いのか」等、入居目的をはっきり整理して入居するホームを選択する必要があります。

では、老人ホームの1日の生活の流れはどうなっているのでしょうか。
ここでは、例として介護付有料老人ホームで60室、職員配置3:1、集団ケア(ダイニングが1箇所で各フロアから全入居者が食事時へアテクィビティ時に集められて生活を送る)方式のホームの1日の流れを、職員配置と入居者の生活の視点からご紹介します。

老人ホームでの24時間(AM)

有料老人ホームの朝はとても早いのが特徴です。
AM8:00には朝食が始まります。それまでに、入居者の食事の準備支援、モーニングケア(着替え、洗面。排泄、服薬管理等)が始まります。
担当職員は夜勤勤務者2名と早出勤務者2~3名。早出勤務者は7:00頃に出勤してきます。
7:00~8:00の1時間では、到底60名のモーニングケアは難しいため、夜勤者は朝の5:00過ぎからモーニングケアを始めていきます。
ですから、早い方は5:00に起こされ8:00の食事に備えることになります。

8:00~9:00は朝食。入居者は1箇所のダイニングに集められ、1人の職員が10名程度の入居者の食事介助を担当します。配膳だけで済む方、見守りが必要な方、介助が必要な方、職員はそれぞれに対し必要な援助を行います。
9:00になると日勤者の出勤になります。介護職の他、管理者、看護職、生活相談員、ケアマネ、事務職員等が出勤し総勢10名程度になります。夜勤者は退勤となりますので、8:50~9:10ほどの時間で職員間の申し送りが行われます。

9:30以降、入浴が始まります。介護付有料老人ホームでは1人の入居者に最低2回/週の入浴サービス提供が義務付けられています。60名のホームでは、1日に20名弱の入浴サービス提供が必要になります。
入浴サービスは9:30から昼食時間を除き16:30頃まで提供されます。4名程度の介護職員が入浴サービスの提供を担当します。
10:00からは、お茶と体操等アクティビティの時間となります。要介護高齢者は自室に閉じこもっていると、寝転んでばかりになってしまい、足腰が弱くなったり、認知症が進んだり、寝たきりになったりしてしまいます。定期的な給水と、廃用症候群防止のために身体を動かすことが必要なので、参加は必須となっているホームがほとんど。
また、この時間は入居者がダイニング集まっているため、居室の清掃やシーツ交換が行われます。居室の清掃は、入居者の状態把握のために必要な行為。生活状況観察にもつながります。

12:00前には、遅出職員が出勤し、昼食に備えます。

老人ホームでの24時間(PM)

12:00からは昼食が始まります。
昼食は朝食よりもメニューが多いため、禁止食材の確認や昼食前服薬管理等注意事項が多くなり、準備にも時間がかかります。

昼食が終わると入居者は居室に帰ります。
もちろん、居心地の良いホームでは、入居者同士がダイニングやリビングで、おしゃべりをしたり、テレビをみたり、趣味活動をしたり等、思い思いの時間を過ごします。
家族の面会や見学者対応が多いのもこの時間帯です。
食事が終わると、手の空いている職員による通院介助、訪問理美容、訪問診療医による診察、散歩等を行います。気の利いたホームでは、出張コンビニサービスや、ネイルサービス等も行われます。

15:00からはお茶とアクティビティの時間が始まります。
職員が工夫を凝らしたアクティビティ活動やクラブ活動を行うのもこの時間帯になります。
16:00になると早出勤務者が退勤し、夜勤勤務者と交代します。

17:00から夕食の準備に入り18:00から夕食が始まります。
18:00には日勤勤務者や管理者、看護師、生活相談員、ケアマネ、事務職員等が退勤します。
19:00で夕食は終了し、入居者は居室に帰りゆっくりくつろぎます。
その時間帯からイブニングケア(着替え、洗面、排せつ、服薬管理等)が始まります。
21:00には遅出勤務者が退勤し、ホーム内は夜勤勤務者のみとなります。
入居者も就寝の準備に入り、夜勤者は定期的な訪室による見守りとナースコール対応を行います。

有料老人ホームの1日の流れはこんな感じになります。
どういう感想を持たれましたか?「意外に忙しいのでは」と感じた方も多いのです。とても「自由気ままな生活」は望めないことがお分かり頂けたかと思います。

自分に合うホームをどうやって選ぶ?

自分(もしくは家族)に合うホームはどう選べばよいのか?
要介護度の高い方、認知症が進行している方は手がかかります。そういう方は職員配置が多いホームを選ぶ方が無難です。ただ職員の多いホームは入居一時金や月額利用料が多くかかります。介護の沙汰も金次第ということですね。

ここで注目いただきたいのが、そのホームの運営方式が集団ケアかフロアケア(グループケアもしくはユニットケア)かということ。
契約上決められた配置規準が3:1でとしても、実際の配置人員はフロアケアの方が多いのが実態です。
重要事項説明書をご覧いただくと、「契約上の配置人員」と「実際の配置人員」の記載欄があります。
フロアケアは、20名程度のフロア毎に職員配置を行うため、当然、配置人員が多くなりがちです。
夜勤勤務者も各フロアに配置しているため、集団ケアのホームよりも手厚い人員配置になっているのが一般的です。認知症の進んだ方、要介護度が高く手がかかると思われる入居者には、フロアケアのホーム方が適しています。

他方、要介護度が低く、アクティビティ活動を楽しみたい方は、集団ケアのホームをお勧めします。
集団ケアのホームは夜間帯の人員配置が少ないですが、その分、日中に手厚い配置人員を行っているホームが多い傾向が見受けられます。
クラブ活動や外出レク、リハビリ等を期待する方はこちらのタイプのホームの方が良いでしょう。
(※全てのホームに当てはまるとは言えませんので、見学時や重要事項説明書での確認が必要となります。)

いずれにせよ、ホームに何を求めるのか?入居者が必要とするサービスをきちんと整理した上で、その方に合ったホームを選択する必要性をご理解いただけたかと思います。

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