失敗しない老人ホームの選び方~契約時のチェックポイント~
有料老人ホーム入居前の最後のセレモニーが「契約」。運営会社の係員が「契約書」および「重要事項説明書」を読み上げていきます。
ご高齢者でなくとも、結構、時間がかかり集中できない場合も多く見受けられます。
私の経験上、「これまで十分に検討してきたから大丈夫」と思い込み重要な内容を聞き逃してしまうことも。
特に重要なのが「退居要件」。
施設のパンフレットやホームページ、重要事項説明書にはきちんと表記されずに、契約書にしかかかれていない場合が多いです。今回は「退居条件」を中心に、契約時に確認が必要なことを記載いたします。
ホームを追い出されることも
入居したホームを追い出されることはないでしょうか?当然、そういうケースはあります。運営者側から退居をお願いされる状況としては、
①入居者やその家族、身元引受人が他の入居者、職員に対して暴力を振るうなど頻繁に迷惑行為を行う場合
②入居者や家族とホームの信頼関係が損なわれ、ホーム側が適切なサービスの提供を継続出来ないと判断した場合
③必要な医療処置がホームの対応可能な範囲を超えた場合
④入院が長期にわたる場合
⑤要介護高齢者を受け入れるホームで介護保険の認定が「自立」と判定された場合
⑥利用料の未払いが続いた場合
大きな要因は、「迷惑行為」「医療措置」と「経済的事情」の3項目です。
認知症や精神疾患、クレーマーが対象
「迷惑行為」にあたるのが①②のケース。
入居者自身の認知症を始めとする精神疾患が進行した場合によく起こるケースです。
最近は自治体のガイドラインで「身体拘束」が難しくなったため、特に暴力行為や自傷行為に対し、ホーム側が対策をとれなくなると「退居」に関しご家族に相談を始める場合が見受けられます。
また、最近多くなってきたのが、理不尽なクレームを頻繁に言ってきたり、ホーム運営ルールを平気で破るご家族に対する退居勧告。
ホーム運営スタッフも人間。度重なるクレームやルール違反に対し毅然と対応するホームが増えてきています。
医療措置に関するチェック事項
「医療措置」にあたるのが③のケース。
入居前に十分チェックが必要です。ただし、ここにこだわりすぎると、重度の方ばかりが入居しているホームを選択してしまうことになります。
ですから、現在の病状にあわせた看護体制、協力医療機関のチェックは必要ですが、ホーム選びは入居者の感覚にフィットするホームを選択することを優先し、医療行為的に合わなくなった時点で早めに住み替えを考えという考え方も大切。
ただし、入居一時金が数千万円の超高級有料老人ホームに入居される場合は、経済的に住み替えも難しくなりますので、多くの持病を抱える方は、将来を見据えて24時間看護体制を敷いているホームを選択することをお勧めします。
また、意外と知られていないのが協力医療機関の選択制。
要介護状態になると、在宅医療を行う医療機関がホームに来てくれる場合がほとんどですが、時折、1つの医療機関しか選択できないホームがあります。
ホーム運営上そういう方針をとっているホームもありますが、1人の医師が全ての病気に万能かというとそうでもありません。
特に精神疾患や認知症、呼吸器疾患、疼痛緩和のペインクリニック等、専門医でないと困る疾患も多くありますので、複数の医療機関を選択できるホームを選ぶようにしましょう。
上乗せ介護費用の確認は重要
「経済的事情」にあたるのが④⑤⑥のケース。
④、⑥については、介護が必要な方を受け入れる低価格型のホームに見受けられます。ホームの収入は、月額利用料と介護保険料からなっています。介護保険料の1人当たり単価は大体22万円/月程度。
④、⑥のケースでは介護保険料がホームに入ってこなくなりますので、低価格型のホームでは収入の6~7割を失ってしまうことになります。
ここに関しては、契約時にしっかり確認しておきましょう。
⑤のケースで注意が必要なのは、「上乗せ介護費用」。
特に住宅型有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅は介護保険の利用限度額を超える場合は自費料金となるところもあります。例えば認知症が進行したり、寝たきりになった場合で、夜間のオムツ交換が頻回になった場合や医療行為(夜間の痰吸引等)が頻回に必要となった場合に、十万円以上の自費料金を請求される場合もあります。
サービス一覧と料金表をきちんとチェックし、月額利用料と公的介護保険でどこまでのサービスを受けられるのか、自費料金が必要な場合はどういう場合か、介護保険限度額を超えた場合に定額のパック料金制度があるかどうかをチェックする必要があります。
あと、高価格帯の老人ホームで注意が必要なのが個別料金。例えばレクリエーション参加費用やリハビリ費用。これに関して「個別料金制度」を取っているホームもありますので、こちらのチェックも行いましょう。
今回は、「退居条件」を中心に、有料老人ホームの契約時に必要なチェック事項を説明しました。ここで注意しておかないと、「こんなはずではなかった」と後悔する場合も。皆さん面倒臭がらずに取り組んでくださいね。