介護施設のちがい⑥ 民間の英知の結集 住宅型有料老人ホームとは
住宅型有料老人ホームと介護付有料老人ホームの違いは?
「民間版特養?介護付有料老人ホームとは?」で記載しましたように、介護付有料老人ホームや、特別養護老人ホーム(いわゆる「特養」)と住宅型有料老人ホームの違いは何かとよく聞かれます。
多くの住宅型有料老人ホームの運用実態を考えると、入居者が受けるサービス面においては、介護付有料老人ホーム、特別養護老人ホームとそんなに遜色がないのが実態です。
介護保険法上は、介護付有料老人ホームが「特定施設入居者生活介護」という準施設扱いなのに対し、住宅型有料老人ホームは、あくまで”住宅”。
法律上(老人福祉法上)は、「高齢者を対象に食事や見守りサービスを提供する施設」というだけで、介護サービスの提供は義務付けられていません。
介護が必要になった場合は、近隣の在宅介護サービス事業所(ケアマネ事業所、訪問介護事業所やデイサービス事業所、訪問看護事業所)に入居者本人もしくは家族がサービス提供依頼を行い、介護サービスの提供を受けるのが建前となっています。
ただ、特別養護老人ホームが建築補助金等の財政上の都合で、また民間版特別養護老人ホームでもある介護付有料老人ホームさえも介護保険財政の都合で行政により厳しい出店規制がある中で、介護が必要で自宅では暮らせないご高齢者が溢れている実態に対応すべく、民間の力で民間の知恵を結集して運営されているのが”住宅型有料老人ホーム”です。
住宅型有料老人ホームで介護サービスを受ける”仕組み”とは?
住宅型有料老人ホームで介護サービスを受ける場合の”仕組み”について説明しておきます。
住宅型有料老人ホームの料金制度は、
・家賃相当額
・管理費(もしくは共益費)、サービス費
・食費
に大別されます。
家賃相当額、食費は読んで字のごとしのサービス提供のための金額ですが、「管理費(もしくは共益費)、サービス費」っていったい何なのでしょうか?
実はこの部分が”民間の英知の結集”なのです。
この部分で、大抵の有料老人ホームは「夜間の見守り」「緊急コール対応」「生活相談」を行っており、それ以外にホームによっては、看護師の配置による医療的なサービスの補助、介護保険サービスでは賄えない介護サービスの補助、リハビリ、レクリエーションを行っています。
介護保険サービスについては、住宅型有料老人ホームを運営する会社が近隣や同一施設内に「訪問介護事業所」「デイサービス事業所」「訪問看護事業所」場合によっては「訪問リハビリ事業所」(同一法人系列の医療機関が運営)を設置。
入居者に介護保険サービスを介護保険の要介護度により規定された区分支給限度額内で提供しています。
もちろん、自身が希望する他社のデイサービスに通うことも可能な場合もあります。
ただ、訪問介護サービスだけは運営の都合上、自社のサービスを利用することをお願いされている事業所が多いようです。
その事業所のサービスの特長は何なのか?ここの見極めが大切。
住宅型有料老人ホームは、本当に多種多様です。
そのホームの運営者の理念により、
・リハビリに強い事業所(同一法人でリハビリに特化したデイサービスを運営していたり、訪問リハビリ事業所を運営していたりするホームです。)
・レクリエーションに強い事業所(同一法人でレクリエーションが盛んなデイサービスを運営していたり、管理費等を多めに設定し、毎日ホーム内でレクリエーションを実施している事業所。)
・医療依存度の高い方を受け入れてくれる事業所(同一法人で訪問看護事業所を運営していたり、管理費等を多めに設定し、24時間365日看護師を配置している事業所。)
・手厚い介護サービスを提供する事業所(管理費等を多めに設定し、夜間の見守り要員を増員したり、日中の職員配置を多めにしている事業所)
等、様々な特長があります。
居質の広さも共用施設の充実度も様々です。
利用料金が高額だから"サービス品質が良い”、低額だから”サービス品質が悪い”ということも一概には言えません。
パンフレットやホームページを見ても良くわからないですので、ホーム選びは専門家にお願いした方が賢明ではないでしょうか。
良い”住宅型有料老人ホーム”とは?
ただ、低価格型に関しては全てのサービスが充実しているわけではありません。
医療依存度の高い方を受入れるところはレクリエーションがなかったり、逆にレクリエーションが充実しているところは、医療依存度の高い方はNGだったりします。
少ない運営費の中で運営しているのですから、入居する方が、自身の状況に併せてホームを選択する必要があります。
経営上の都合で言うと、注意しておかなければならない点がもう一つ。
住宅型有料老人ホームは”要支援”の方は受入れ不可のホームが大半です。
これは、系列の訪問介護事業所が”介護予防訪問介護事業所”の許認可を取っていない場合が多いという事情があります。
ホーム選びには、この点も考慮するべき点です。
では”良い”住宅型有料老人ホームを選ぶにはどうしたら良いのか。
これは”職員の質”の見極めしかないです。
特に低価格型はギリギリの人数で運営していますので職員さんはてんてこ舞い。
いつも仕事に追われています。
そんな中でも、明るく楽しそうに入居者に接しておられる職員の多い事業所は”良い”ホームだと言えます。
何か所か見学していると、自然にわかってくるものです。
住宅型有料老人ホームに限らず、特別養護老人ホームや介護付有料老人ホーム他の介護のための入居施設を選択する場合はこの点に注意しましょう。