介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

「介護職で稼ぐ」を公言する会社 高い給与を実現できる秘密とは…

 「介護人材の処遇改善」が日本全体に突き付けられた大きな課題となっています。
2024年度の介護報酬改定でもそこが大きなテーマに掲げられています。
しかし、社会保障財源に限りがある中では行政・介護事業者ともに効果的な対策を打ち出せないでいます。

そうした中、自社のサイトで「介護で稼いで何が悪い」と大きく打ち出す介護事業者に話を聞く機会がありました。

訪問介護主体の設立まだ数年の若い会社です。
実際に社員の収入を聞くと、管理者で全産業平均年収の400万円台半ばを大きく上回っていました。

 「介護保険外サービスに力を入れているのですか?」と聞きましたが「全くしていない」とのことでした。それどころか、各種加算も処遇改善加算以外は算定しておらず「収入を増やす」ことについては、あまり頓着をしていないようでした。

 では、この会社は、どのようにして従業員に高い給与を支払えているのでしょうか。
そのカギは「人材の評価軸」です。

 介護事業会社がスタッフを評価する場合、介護福祉士資格の有無や業界でのキャリアの長さなどを基準に「技術者」として評価しがちです。
しかし、技術者としての介護スタッフの評価は介護報酬という形で国が定めていますので、多額の保険外収入でもない限り、報酬を越えて給与面で評価するのは困難です。

結局のところ「ポストなどでは評価しているが、給与面には評価が反映されない」というケースになることが少なくありません。
これは働く側にとって「リーダーになり、仕事量や責任は増したけど給与は全く増えない」という大きな不満につながりがちです。

 それに対し、この会社では、介護スタッフを「ビジネスマン」として、つまり「会社にどれだけの収益をもたすか」という点を重視して評価をし、それを給与に反映させているのが特徴です。

 例えば、非常に人脈が豊富で「その人の紹介で1年間に10人が新たに入社した」という実績をもつスタッフがいたとします。仮に1人採用するのにかかる求人広告などのコストが50万円だとすると、このスタッフがいることで1年間で500万円が削減できた計算になります。
その分を給与としてしっかり評価する、という考えです。

 この考え方は、さまざまな形で応用できます。
例えば、SNSでのフォロワーが多い人であれば、会社・事業所のPRに寄与できます。
イラストが得意なスタッフであれば、パンフレットやチラシを制作してもらえます。これで外注コストが削減できたり、入社や利用者獲得につながったりしたのであれば、その分を給与の形で還元してもよさそうなものです。
しかし、実際にはそうしたケースは少ないようです。

 以前、取材をしたことがある会社も、介護スタッフの中にマンガを描くのが得意な人がいて、マンガ・イラストを多用したパンフレットを制作していました。
しかし「マンガを描いてもらう」行為自体については、何の報酬も謝礼も与えていないとのことでした。
「業務の一環ですから」とその会社は語ります。

しかし、休憩時間を削ったり、自宅に持ち帰ったりして制作していた可能性は全くないのでしょうか?
制作する分、通常の業務量を減らしていたのでしょうか?通常の仕事に加えてその人にしかできない業務を行い、それが会社にとってプラスになったのであれば、臨時賞与などを与えてもいいとは思いますが…

 介護職には本業以外にも様々な特技や能力を持った人が大勢います。
しかし、それを会社のために活かした場合に、それをきちんと評価する仕組みが十分に確立されていないのではないでしょうか。

トイレ介助は上手くできなくても、別の形でそれ以上に会社にメリットをもたらしているスタッフは大勢いるはずです。

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