介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

今は「亡くなった人」にもLGBTQ対応 あらゆるサービス業に必要な受入力強化

 大阪に本社がある大手葬儀会社が先日「LGBTQフレンドリー宣言」を行いました。
 
 葬儀は伝統的なしきたりや慣習に則って行われることが多いため、近年あらゆる分野で急速に進む「LGBTQへの適切な理解・対応」という点では、やや乗り遅れている感があったことは否めません。

 例えば、仏式の場合には、戒名が僧侶によって付けられるケースが大半ですが、男性は「○○信士」、女性は「○○信女」など、明確に性で区別されています。
納棺の際に着る服も男女で区別されていることが一般的です。
このほか、遺影の背景や祭壇全体の配色なども「女性だから淡いピンクでどうでしょうか」などという形で葬儀会社から提案されることが多いと思います。
湯灌(エンゼルケア)も同性のスタッフが行うことが大原則でした。

「しかし『こうした対応で、本当にご本人や家族に寄り添った葬儀ができているのだろうか』という疑問がありました」と、この葬儀会社は語ります。
以前は現在に比べてLGBTQに関する社会の理解が十分ではなく、ときには差別やいじめの対象になっていたこともあるため、高年齢者層になればなるほど自分や家族がLGBTQであることを隠す傾向にあります。
「私は、こうした葬儀は望んでいなかった…」とご本人が天国から感じていたケースは多かったかもしれません。

 この葬儀会社では、亡くなった方がLGBTQであった場合でもスムーズに対応できるようサービスメニューの多様化を進めると同時に、社員の教育研修を強化していくそうです。

 このように、亡くなった方に対してまでLGBTQの対応が進む中で、介護業界においてはまだまだと言わざるを得ないのが現実ではないでしょうか。
先ほども述べたように、現在高齢者となっている世代の人は、差別などを恐れて、仮に戸籍上の性と性自認が違っていてもそれを明かさないことが殆どでした。
しかし、一般的には8%程度の人がLGBTQであると言われています。定員30人の施設やデイサービスであれば、2~3人はいる計算です。
「女性として」「男性として」サービスを受けて「ありがとう」「楽しい」などと言っていても、実際にはそれに対して違和感や不満を抱いている人はきっといるでしょう。

 例えば、高齢者施設では利用者にメイクやネイルケア、エステなどを楽しんでもらうレクリエーションを行うところがあります。
新型コロナに関する各種制限が緩和される中で、再開したというところも多いかと思います。

 しかし、こうしたレクは大概が「女性利用者限定」です。
その理由として「男性はメイクやネイルなんかしないから」という施設側の先入観があります。
しかし戸籍上・肉体的には男性でも心は女性で「私もメイクやネイルケアをしたい」と思っている利用者もいるかもしれません。
かといって全員の前で「男性で参加したい方はいますか~」と聞いても手を挙げる人がいるとは考えにくいでしょう。

逆に戸籍上・肉体的には女性でも心は男性で「メイクなんか嫌だ」と思っている利用者もいる可能性があります。しかし「参加したくない」という利用者に対し、スタッフが「楽しいですよ」「メイクすると美人に見えますよ」と必死に声がけをし、参加を呼びかけているのが現実です。
よくよく考えると、利用者の本音を全く理解できていない、全く無神経な行為といえます。

 ポイントは、全入居者に対して、スタッフと1対1の場で「今後メイクのレクリエーションがあるのですが参加しますか?」と聞くこと、そして「メイクをしたところを他の人に見られるのが恥ずかしいなら、お部屋で個別に受けることも可能ですよ」と提案するなど、「全ての選択肢」を「全員に等しく」与えることです。

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