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訪問系サービスでも外国人就労可能へ 政府検討会が年内めどに議論とりまとめ

 7月24日に開催された「第1回外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」(主催:厚生労働省)で、「外国人介護人材の訪問系サービス業務への就労」が検討テーマの一つとして掲げられました。

慢性的な人材不足が続く介護業界の中でも、訪問ヘルパーは特にそれが深刻で、求職者1人あたりの求人数は平均で15社にも及ぶと言われています。
外国人人材の就労が可能になることで、労働力の確保につながることが期待されます。

 施設系・通所系サービスとは異なり、これまで技能実習生などの外国人人材が訪問系サービスで就労することが認められてこなかった大きな原因は「言葉や生活習慣、文化などの壁」にあります。
訪問介護を例にすれば、現場では利用者とスタッフが1対1になります。
ほかのスタッフからのサポートを受けることができないため、何かあっても全て1人で対応しなくてはなりません。

例えば、訪問中に利用者の体調が急に悪くなることも考えられます。
その際に「痛い」「苦しい」などの利用者の訴えを正確に把握し、主治医への通報や救急車の手配をするなどといった行動を、日本語能力が十分でない外国人ヘルパーがどこまで行えるか、といった点が不安視されてきました。

 また、利用者宅にある食材などを使って食事を作ることもあります。
その場合に「外国人が日本人高齢者の味覚に合った食事を作れるのか」などという指摘もあります。高齢者の自宅ですから、もしかしたら畳敷きに和式トイレかもしれません。「老人ホームの居室とは全く異なる住環境の中で、身体介助などがしっかりと行えるのだろうか」も懸念材料です。

 そして、残念なことに、利用者やその家族の中には、外国人に対してあまり好い印象を持っていない人がいるのも事実です。
「他の人の目が届かないシチュエーションで、外国人を家に入れるのは不安がある」という声も聞かれます。

 したがって、今後、訪問系サービスの担い手を外国人にも拡大させていく上では、こうした課題や懸念をクリアしていかなくてはなりません。検討会当日、委員の中から「利用者と1対1にならないような内容の業務から解禁していったらどうか」といった提案があったように、実施に際しては何らかの条件や制限が設けられるといったケースも十分に考えられます。

 なお、現在の技能実習制度については、劣悪な労務環境による実習生の逃亡などの問題が多かった(介護業界以外の話ですが)ことを受け、廃止されることが決まっています。
訪問系サービスへの外国人就労については、それに代わって新たに創設される制度に盛り込まれていくともの思われます。そういった点も含め、この検討会では、今後数回の議論を行い、年内をめどに議論を取りまとめる予定ですので、その行方が注目されます。

 さて、今後、訪問介護で外国人が働けるようになった場合、これまで「蚊帳の外」だった訪問系サービスも外国人を活用するようになるのですから、外国人介護人材の獲得競争が激化する可能性があります。特に前述したような理由から、訪問系サービスは日本語能力などに優れた外国人を求めることが考えられます。日本語能力N2などの外国人は相当人気が高まるのではないでしょうか。

 一方、外国人人材側には「日本で稼ぎたい」という強い動機があります。そうした中で、施設系とは異なり「夜勤がない(夜勤手当がもらえない)訪問系サービスで働きたいと考える外国人人材がどれだけいるか」という点については、正直なところ未知数と言わざるを得ません。

両方のニーズがうまくマッチするような仕組みの構築が期待されます。
 

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