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技能実習制度廃止 人材確保目的の新制度創設 介護事業者に求められる対応策とは

 4月10日、出入国在留管理庁が事務局を務める「第5回技能実習制度及び特定技能の在り方に関する有識者会議」が開催され、これまでの議論の中間たたき台が発表されました。
その中で、検討の大きな方向性として「現状の技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討すべき」と打ち出しており、技能実習制度の廃止が確定的となりました。

介護が技能実習制度の対象となったのは2017年のこと。しかし、それ以前から制度の様々問題点が指摘されていました。

まず、制度全体の問題点として、
①国は「日本から発展途上国の人材へ知識・技能を伝達する、人材育成の制度」という立場を(少なくとも表面上は)取っていたが、実際に制度を活用する事業者は「労働力の確保」という観点に立っており、建前と実態に大きな乖離が見られた、
②事業者に「外国人は日本人より安く雇用できる」という先入観・誤解があり、労働法規違反などの劣悪な環境で働かされる実習生が多発した、
③実習期間終了後に日本で長期滞在・就労するハードルが高い、などがあげられます。

さらに、介護については、ベトナムやインドネシアといった実習生の主な母国では産業としてほとんど確立されていないことから、「日本で学んでも帰国後に役に立つ機会がない。技能実習として意味があるのか」という点が指摘されてきました。

今回の中間たたき台では、これらの問題を受けて、新制度は「人材育成」という目的は維持しつつ、そこに「人材確保」も加え、より実態に即した制度とするとしています。

また、対象となる職種は、特定技能制度の対象職種と揃える予定です。
これにより新制度から特定技能に移行し、外国人が中長期的に日本で活躍できる環境を整えます。
また、現状では、実習生の転籍は原則として認められていませんが、新制度では、ある程度の制限は残しつつも、転籍を可能にすることを打ち出しています。

新制度の詳細については未定の部分も多いのですが、介護事業者にとって今後どのような対応が必要になって来るのか、現時点の情報で検証してみましょう。

介護に限らず、技能実習生を劣悪な環境で働かせている事業者には「技能実習生は辞めない。辞めても代わりの人を監理団体が用意してくれる。だから、劣悪な環境でも大丈夫」という甘えがありました。
しかし、新制度では転籍が可能になります。劣悪な環境では他の事業所にどんどん移られてしまい、人材確保が困難になる可能性もあります。
労働環境の見直しが求められるでしょう。

先日、ある大手人材会社が、現在特定技能で就労している外国人人材にアンケートを取ったところ「なるべく多く稼ぎたい。そのためには残業も厭わない」と考えている人が多い結果がでました。
このように、彼らは長時間労働自体は嫌がることはありません。
しかし「収入のため」という明確な目的があるため、サービス残業などは不平不満に直結します。

介護事業者の場合、「利用者が困っているときは、休憩時間や休日を犠牲にしてでも対応すべき」という「奉仕の心」を従業員に求めがちですが、そうした考えは彼らには通用しないでしょう(もちろん、日本人に対しても問題ありですが)。

また、現在の監理団体・登録支援機関の中には業務品質などに問題があるところが散見されることから、新制度では監理団体などの要件を厳格化する方向性が示されています。
労働法規無視などの悪質な事業者との付き合いが監理団体などにとってはマイナス評価になることも考えられるため、取引を断られる可能性もあります。

「外国人を活用したいが、できない」というケースになることも考えられます。
 

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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