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令和3年度介護報酬改定の主な事項について~総集編~

全体で0.7%UP 新型コロナ対応等で0.1%UP

これまで12回に亘ってご説明してきました令和2年度介護報酬改定。
今回は、総集編と題し、特筆すべき点をまとめてみました。

2021年度の介護報酬改定の改定率は+0.7%。
新型コロナウィルス感染症の流行拡大という状況を鑑み、ほとんどのサービスの基本報酬は引き上げられました。

改定の第一の柱として位置づけられたのが「感染症や災害への強化と業務継続に向けた取り組みの強化」。
全サービスの基本報酬が0.1%上乗せされました。

業務継続計画(BCP)の設定、委員会の設置や研修・訓練などの実施が義務付けられ、新型コロナウィルス感染症に対応するために充てるよう時限措置として定められています。

地域包括ケアシステムの推進!!各サービスの認知症対応力の強化!!

第二の柱が「地域包括ケアシステムの推進」。
急増が見込まれる認知症高齢者への対応を強化するための方策が打ち出されました。

訪問介護サービスに認知症専門ケア加算が拡大されています。
同サービスは、既に施設系等で導入されていましたが、専門職配置のハードルが高く、算定事業所はほとんどありませんでしたが、eラーニングを活用した研修受講の推進等を行うことで算定事業所の増加を見込んでいます。

さらに、医療・福祉関係の資格を有さない職員が介護に携わるサービス(特定施設、通所サービス、特養等)においては、そうした職員に認知症介護基礎研修を受講させることを事業者に義務づけられました。

今回の改定では、地域包括ケアの中心サービスとして多機能系、認知症GH、特定施設、住宅型有料を活用したい意図が現れています。

多機能系サービスでは基本報酬が一律0.6%UP(看多機は0.3%UP)された他、新たに認知症行動・心理症状緊急対応加算が創設され、緊急の短期利用居宅介護認められた他、登録者以外の短期利用居宅介護の利用も可能になりました。

認知症GHの機能強化と規定人員緩和も大きな一手。
基本報酬が一律0.4%UPした他、3ユニットの場合、条件付きで夜勤職員の配置を二人に緩和できる他、サテライト事業所設置も認められました。
医療ニーズの高い入居者が増えている実態を踏まえ、医療連携体制加算の実績要件緩和等も行われました。

特定施設に関しても、一律0.4%UPに加え、看取り介護加算が拡充されています。
また、医療ニーズの高い入居者の受入れ推進のため、入居継続支援加算の要件緩和、テクノロジーを活用した複数の機器(見守り機器、インカム等)を導入した場合に、介護福祉士の配置が6:1から7:1に緩和されます。

住宅型有料老ホーム、サ高住のサービス提供に関しては利用限度額の関係で不利な改定も行われていますが、前述の訪問介護サービスへの認知症専門ケア加算も住宅型有料老人ホームの活用を意識したものではないでしょうか。

そういう意味では、政府が推進する地域包括ケアに関して、在宅系住宅(特定施設、認知症GH、多機能系、住宅型有料老人ホーム)の活用を大きく打ち出した改定となりました。
 

科学的介護推進に向けた加算を新設!!

第三の柱は「介護サービスの質の評価と科学的介護の取り組みの推進」。
ほぼ全サービスにおいて、科学的介護推進の加算が新設されました。

増加する要介護高齢者、慢性的な人員不足のため効率的な業務改革が必要な介護業界。
全国レベルで介護データを収集してエビデンスを構築。介護サービスの質の向上と効率化を目指す体制づくりが本格化されます。

算定要件は事業所の利用者の基本的なデータ(ADLの値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況、心身の状況)を厚労省に提出し、データベースを活用してサービス計画を確認する等、PDAサイクルを推進しケアの質を向上させる取り組みを行うこと。
施設系サービスでは詳細な既往歴や服薬情報の提出・活用も加算されます。

特定処遇改善配分ルールを緩和

介護人材不足という大きな問題を解決するため、「介護人材の確保と介護現場の革新」も大きな柱となっています。

具体的には、介護職員等特定処遇改善加算の算定を普及させるため(現在65%で算定)、配分ルールが見直されました。
現行ルールは「経験・技能のある介護職員:その他介護職員:その他職員」の配分割合は「2以上:1:0.5以下」と差が大きく、「職種間で柔軟に配分されない」という声が多かった。
そのためこのルールについて、「経験・技能のある介護職員は「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」としている部分を「より高くすること」に緩和されました。

併せて、サービス提供体制加算では、現行の算定要件よりも介護福祉士の配置割合が高い、または職員の勤続年数が長い事業所を手厚く評価する最上位区分を新設されました。

訪問リハビリは+5.1%の大幅UP

その他の見るべき点は、訪問リハビリの+5.1%のUP。
地域包括ケアの推進のため、機能回復が地域の大きな課題としての改定だと思われます。

訪問介護は微増、訪問看護は微増ながら、訪問看護の本来の目的(地域の看護力UP)を図る目的で、リハビリ職の訪問のみ1.4%引き下げられました。前回の医療保険改定と同義のことが介護保険でも行われました。

全体的にはプラス改定。
施設系、在宅系住宅事業、リハビリには大きなプラスとなった今回の介護保険改定。
皆さんの事業所、利用されているサービスではどんな影響となりましたでしょうか。
4月に備えて準備していきましょう。

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