介護に備えたライフプラン

シニアの知っ得マネー③ 「使う」お金/贈与対策資金

「贈与」と「相続」、どっちがお得?

これまで、生活費で「使う」お金、介護医療に「備える」お金の説明を行ってきました。
今回は、子や孫に対して築き上げてきた資産を「残す」方法についてお伝えします。

具体的には、生きているうちに財産を残す「贈与」と亡くなった場合に財産を残す「相続」という方法がありますが、今回は「贈与」を中心にお伝えしましょう。

そもそも「贈与」と「相続」はどちらが得なのか?
一般的に言うと、税制の違いから負担すべき税額が少ない「相続」が得というお答えになります。

1,000万円の現金を親から子(成人)へ贈与した場合と相続した場合を比べてみましょう。
贈与の場合は、1,000万円のから基礎控除110万円を引いた残りの金額に税率30%をかけ、さらに90万円を引いた額、すなわち177万円が贈与税として納める金額になります。

相続の場合は、相続財産に対する基礎控除が最低3,000万円ありますので、このケースでは控除枠内となり、相続税の金額は0円となります。

このように同じ価値を残す場合は「相続」の方が有利に思えますが、実はそうとも限りません。
では、贈与はどんな時に役立つのでしょうか?

理想の「贈与」のため、時間を味方につけよう!!

110万円以内の贈与は、贈与税を払わずに毎年行うことが出来ます。
つまり10年連続贈与を行なえば、1,100万円を無税で贈与出来ることになります。
20年で2,200万円、受取人が二人の場合では、10年で2,200万円となります。

一方、相続は亡くなるタイミングの1回で行うことになります。
これらを踏まえて、次のケースで見てみましょう。

(例)夫を亡くした母親が、資産6,000万円を持っていて子供二人に相続する場合。
【ケース1・・・贈与を利用せず相続する】
控除額が二人で4,200万円となり、残った資産1,800万円に相続税160万円を納付。
【ケース2・・・効果的に贈与を利用する】
10年間110万円ずつ二人に贈与を行ったとすると、子供二人に2,200万円の現金が無税で移せます。
同時に母親の資産は3,800万円となりますので、そのタイミングで母親が亡くなった場合、4,200万円の控除があるため相続税は0円となります。

つまり基礎控除を超える資産をお持ちの場合は、贈与を使うと効率的に資産を次世代に残すことが可能になります。
そのためにも、前もって準備を整え、時間をかけて贈与を行うことが重要です。

用途によって多種多様な贈与方法がある!!

贈与には用途を限定して行われる贈与もあります。
最近よく耳にするのが「教育資金贈与」です。

これは子や孫の教育資金を一括で贈与する方法で、1,500万円まで非課税で行うことが可能です。
教育費用がまだ必要で、暦年贈与が面倒な場合に適しています。

また「結婚・子育て資金贈与」という贈与もあります。
これも結婚資金や子育てにかかる費用を一括で贈与するというもので、1,000万円(結婚関係は300万円)迄が非課税となっています。

贈与する方も受ける方もメリットのある制度ですが、その半面、制度の適用には制限も数多あります。
用途以外の使い方は出来ないので注意が必要です。

家族への想いこそが大切

そもそも贈与や相続を行うにあたって一番大切なことは、残された家族に対してどんなことをしてあげたいのか、という事です。

老後の世話をしてくれる子供の為にと思う方や、参列がかなわないかもしれない孫の結婚式のためにという方もいらっしゃると思います。
そうではなく、ただ相続税を払いたくないからと言った税逃れの為の贈与は、場合によっては後になって否認されることもあります。

そうならないためにも、実際に贈与を行う前には専門家に相談することをお勧めします。

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この記事を書いたコラムニスト

小川 憲英 (オガワ ノリヒデ)

ライフプランナー

シニアのライフプランニング

同志社大学法学部卒業。在宅診療クリニックの事務長、有料老人ホーム紹介所の相談員、シニア向け情報誌の発行人兼編集長を経て、現在は外資系金融機関に勤務。単なる金融マンとしてではなく、医療や介護といった生活に欠かせない視点から行う独自の顧客サポートが評判。その他にボランティア活動も積極的に行い、最近はシニアのより良い住まい方を草の根レベルで周知させる「お節介士」としても活躍中。
今後のミッションは、”出会った全ての人が自分の老後を自分でコントロールできるよう、一緒に考えていくこと”とのこと。

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