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職場の熱中症対策 6月1日より義務化 体調不良を申告しやすい雰囲気づくりを

世間ではあまり話題にはなっていませんが、2025年6月1日より厚生労働省の労働安全衛生規則が見直され、企業などの雇用主に対し「職場の熱中症対策」が法的に義務化されました。

もちろん介護事業者も状況によってはその対象になりますので注意が必要です。

2024年に業務中に熱中症にかかったことが原因で労災認定を受けた人は全国で1257人いました。

そのうち31人が亡くなっています。

また2020年から2023年までの4年間に発生した職場での熱中症死亡事故103件について厚生労働省が調べたところ、100件が「初期症状の見逃し」や「対応の遅れ」が原因と考えられました。

つまり雇用主がしっかりと対策を行っていれば、命が助かっていた可能性があるのです。

熱中症対策が必要となる職種・業務はどのようなものなのでしょうか。

一般的には建設・工事現場など屋外での肉体労働をイメージしますが、規則で定められている要件は「WBGTと呼ばれる暑さ指数が28度以上または気温31度以上」の環境で「連続1時間以上または1日4時間以上の作業を行う場合」となっています。

ですから介護業界で言えば、炎天下に自転車や徒歩で利用者宅を訪問するヘルパーや看護師、リハビリテーション職、ケアマネジャーが該当する可能性があります。

施設では入浴介助や調理、屋外の清掃業務などは作業時間によっては該当すると思われます。

このほか、居宅介護支援事業所や病院を回る営業職なども対象になると考えられます。

では、熱中症対策として具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか。

朝礼や社内メールなどで「暑さが厳しくなってきましたので熱中症に気を付けましょう」「水分・塩分をしっかり補給して下さい」などと伝えるのは単なる「注意喚起」であり、厳密には「対策」ではありません。

前述したように、職場で発生した熱中症死亡事故のほとんどが「初期症状の見逃し」「対応の遅れ」が原因です。

つまり、長時間作業を止める、身体を冷やす効果のある機器や用具を活用するなどといった「熱中症の発生を防ぐこと」も大事ですが、それ以上に「従業員が認知症になった場合に、組織としてどう対応するか」が求められています。

例えば、従業員本人や周囲の人が体調の異変を察知した際に、すぐにそれを上司や責任者に伝える具体的な方法や、応急処置や医療機関への通報・搬送方法などについてマニュアル化し、従業員に周知させることが「対策」になります。

実際の現場では「体調が悪かったが、皆に迷惑が掛かるので言い出せなかった」「従業員から体調不良の申し出があったが大したことはないと判断し、とりあえず休憩させた」などといったケースが起こっている可能性があります。

こうした対応が結果として「手遅れ」の原因になる危険性があります。

 介護事業所の場合、医療機関への通報・搬送については日頃の業務でしっかりとマニュアル化されていることが多いかと思います。

一方で「体調不良の申告・発見」については問題があるかもしれません。

介護職の中には「自分が対応しなかったら、利用者が困るだろう」といった強い使命感から、体調不良をおしてまで業務を続ける人が多いかもしれません。

また訪問介護のように1人で仕事をしていると、周りの人が体調不良に気づく可能性も低くなります。

熱中症かな?と少しでも感じたら躊躇なく管理者等に連絡できる体制の構築はもちろん、それを行いやすい「職場の雰囲気づくり」も大切なのではないでしょうか。

また、人手不足が深刻な中では難しいかもしれませんが、熱中症リスクの高い季節は、気温の高い時間の長距離移動が少なくて済む訪問スケジュールを組むなどの対応策を講じていく必要もありそうです。
 

介護の三ツ星コンシェルジュ

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