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「介護施設に持ち込みNGの服とは…」 そこに入居者に希望や意思はあるのか?

先日、ある大手検索サイトのニュースページに「介護施設に持ち込みNGな服とは…」といったテーマの記事がアップされていました。

自身もケアラー経験のある福祉の専門家が書いたコラムです。

そして、このコラムには現役介護職からと思われる複数のコメントが寄せられていました。

「安物で大きめの服がいい。介助者に着させやすいし、施設によっては巨大な洗濯機で洗濯するのですぐ傷むから安物で十分」

「マジックテープで止めるタイプはゴミが付着してすぐに付きが悪くなりはだけてしまう。どんな状態でもワンサイズ上くらいの少しゆったりして伸縮性があればかぶりタイプでも脱ぎ着は容易にできる」

「男性は普通のベルトを使用するズボンを持ってくる人が多い。 満足に立てないのに介助で立たせた後でベルトやファスナー閉めるのがどれだけ大変なのかわかってない」

これらのコメントを見て何か気づいた点はないでしょうか。

そうです、「誰一人として『利用者本人の希望や意思はどうなのか』を考えていない」のです。

「介助者がいかに楽か」という観点だけで理想の服を語っています。

私は、このコメント欄をみて「こうした人たちが、朝礼などでは『ご利用者様の笑顔のために』『ご利用者様の尊厳を守ります』などと唱和しているのか」と、少々恐ろしく感じました。

確かに、寝たきりの人などはこのコメントにあるように介助しやすい服が一番かもしれません。

しかし、要介護3ぐらいであれば、スタッフに付き添われたりしながら外出することもあるでしょう。
レクリエーションで外出する機会もありますし、施設外のデイサービスや病院に通う人もいるでしょう。

そうしたときに、サイズも合っていなければお洒落感のかけらもない服を着ていきたいと思う高齢者がどれだけいるでしょうか?

むしろ「恥ずかしくて外出できない」と感じるかもしれません。

もちろん、服装に関しては「転倒しにくい」「身体を傷つけない」などの安全性は十分に考慮されるべきです。

しかし、それが担保されているのであれば、本人が望むだけのお洒落をさせてあげるのが、本当のサービスではないでしょうか。

「○○の服は介助が大変」というのであれば、業務のDX化など他の部分で省力化を図ってみてはどうでしょうか。

また、コメントにある「満足に立てないのに…」は、利用者が機能訓練をしっかり行い立位を保持できるようになれば関係ない話です。

そして「お気に入りのズボンを履きたい」が、機能訓練のモチベーションにつながるかもしれません。

同様に、お気に入りの服であれば、頑張って自分で着替えようとするかもしれません。
それは結果として介助者が楽になることにつながります。

近年、デイサービスや高齢者住宅では、レクリエーションの一環としてネイルケアやメイクを楽しんでもらうといった取り組みが盛んです。

導入した施設は「普段は全く笑顔を見せないご利用者様がニコニコしていた」などと口を揃えます。

このようにお洒落の効果を実感しているのであれば、服装についてももう少し楽しむ機会を作ってあげてはどうでしょうか。

少なくとも高齢者住宅は病院ではないのですから…

以前もこのコラムで書いたと思いますが、以前スウェーデンの高齢者住宅を視察したときに、入居者の女性がピンヒールの靴に真っ白いロングフレアスカート姿だったことに驚きました。

彼女がロビーでお茶を飲んでいる姿は一服の絵か映画のワンシーンのようでした。

また、フィンランドではデイサービスに来ている男性が、ネクタイを締めてジャケットを着ていました。

彼曰く「ここはレディとお茶をする場だ。失礼があってはいかんだろう」とのことでした。


介護の三ツ星コンシェルジュ

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