ハローワークを通じた就業が全体の4分の1 介護事業者側のメリット・デメリットとは
今回も、厚生労働省が設置した有識者会議「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」が2025年4月10日に発表した、「議論の中間とりまとめ」(以下:まとめ)の内容について紹介します。
まとめでは介護人材の確保の現状と課題についても言及しています。
そこでは、介護関係職種の有効求人倍率は4.13倍(2025年2月時点)であり全産業平均を上回っていること、離職率自体も上昇傾向にあること、前職も介護だった介護職員が前の職場を辞めた理由の3割が「職場の人間関係」だったこと、などが紹介されています。
これらは以前から指摘されていたことであり、特に目新しい話ではありません。
私が、まとめを読んでいて注目をしたのは以下の2点です。
1.介護職員の離職率は、約半数の事業所が10%未満。
2.一方で30%以上という事業所が1割存在する。
ハローワーク経由で就労を決めた人の割合は、全産業平均で14.9%なのに対し、介護を含む福祉分野では24.3%(令和5年度雇用動向調査より)
1に関して言えば、日本の産業平均の離職率は、ここ10年程度15%前後で推移していますから、半数の介護事業所で離職率10%未満というのは非常に優秀です。
「低賃金・重労働が原因で現場からどんどん人がいなくなっている」というのは、介護報酬アップを国から引き出したい介護業界側のイメージ戦略ではないかと思えるほどです。
ただし、その一方で離職率30%越えが1割というのはいただけません。離職率30%超えというのは、一般的には「ブラック企業」と呼ばれる水準です。
そうした企業からの離職者は、介護業界に戻る可能性が低いだけでなく、SNSなどで「介護の仕事だけはやめた方がいい」などネガティブな情報を発信するケースも考えられます。
介護業界の人材流出防止・新規就業者増を図るのであれば、こうした離職率の高い事業所に対してピンポイントで改善を求めるなどの方策が効果的と言えるのではでしょうか。
しかし、どれだけ介護業界や個々の事業所が努力をしても離職者がゼロになることはありません。
それだけに採用活動が重要になります。その際に気になるのが、2のデータです。
まず、断っておきたいのですが、私はハローワークを介した就業を否定する考えは全くありません。
しかし、人材紹介や転職エージェント、各種サイトやSNSなど職探しのツールが数多くある中で、ハローワークを介して職探しをというのは少々消極的な感は否めません。
また、仮に「介護業界歴10年」「介護福祉士やケアマネジャーの資格あり」「管理者やサービス提供責任者を経験」などのキャリアがあれば、地域の介護関係者の中でそれなりの人脈・知名度もあるでしょう。
「今の職場を辞めるかも」などという話になれば、「それなら是非ともウチに」と声がかかっても不思議ではありません。
それを考えると、ハローワークを利用するのは、介護の仕事について十分な経験がない人が大半と考えられます。
その利用者が新規就業者の4分の1を占めるということは、入社後の教育・研修に時間を要するなど受け入れ側の負担も多いと考えられます。
介護業界でハローワークの利用率が高いのは「採用コストがかからない」といった事業者側の事情もあるでしょう。
しかし、それは前述したような教育・研修負担の増加につながる可能性もあります。トータルで考えれば、初めから多少のコストをかけて採用した方が、メリットが多かったかもしれません。
もちろん、採用に関してはあらゆる可能性を追求して、多くの手を打つに越したことはありません。
しかし、コストのことだけを考えてハローワークに偏重してしまうのは考えものではないでしょうか。
介護の三ツ星コンシェルジュ