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SNS活用世代のスタッフには好都合? 「アバター介護士」大阪で運用開始

大阪の社会福祉法人が今年の春から「アバター介護士」というユニークな取り組みを始めました。

一部の接客業などでは、モニター上のアバターが利用者の対応をするサービスが導入されています。これを介護用にアレンジしたもので、介護現場での活用はこの法人が全国で初とのことです。

アバターは、離れた場所にいる人がパソコンを使ってリアルタイムで操作します。

例えば、同じ無人接客でも、タッチパネル形式ですと「操作方法がわからない、操作を間違える」という利用者がでてきます。

また、コミュニケーションロボットなどのAIでは、正確な対応ができない可能性もあります。

それに対してアバターは、利用者が操作する必要が無く、仮にイレギュラーな事態があっても適切な対応ができるのがメリットです。

この「アバター介護士」を導入するメリットについて、介護事業者・利用者双方の立場から検証してみましょう。

アバター介護士はモニター画面から出てくることは不可能ですので、身体介助などは行えません。
活用可能な場面はレクリエーションの司会進行や、利用者との会話などのコミュニケーションの部分に限定されます。

しかし、介護スタッフの中にはこれを苦手とする人が珍しくありません。

「人前で話すと緊張する」「声や自身の外見などにコンプレックスがある」「クレームが怖い」など理由は様々です。

アバター介護士であれば「中の人」はパソコン画面に向かって話すだけ(利用者の様子はパソコン画面を通じて見えます)です。利用者からは自分の姿を見られませんし、声も変えることができます。

つまり、完全に自分を消して相手と会話ができるのです。

SNSを使いこなしている世代ならば、名前も素顔も隠した完全な別人格を作りあげた上で社会と接しているのは珍しいことではありません。

リアルな人とのコミュニケーションが不得手な人でも、アバター介護士としてなら活動できる、むしろその人の能力を引き出せる可能性があります。

また、アバター介護士の役目はコミュニケーションですから、介護に関する知識や技能はほとんど必要ありません。
このため学生アルバイトなどでも可能です。

さらに「中の人」は事業所から離れた場所でも勤務できます。

完全テレワークなど働き方の多様化につながりますし、様々な事情で出勤が難しい人でもアバター介護士として就労が可能です。

この社会福祉法人では、現在「中の人」が2名いますが、現在産休中の職員が産休終了後に自宅勤務しながら新たに加わる予定になっています。

一方で、利用者側のメリットは何でしょうか。

アバター介護士の場合、例え中の人が誰であっても、利用者には常に同じアバターが同じ声で話しかけてきます。

特に、認知症の利用者の場合は、いつもと違う人が対応をしたりすると混乱してしまうこともありますが、それを防ぐことができます。

また、アバターですから「中の人」が操作することで自由に姿を変えることができます。

例えば通常の会話の時には、表情の変化がわかりやすい猫を擬人化して顔を大きくしたアバターに、体操のときには指の動きまで細かく再現できる人間の姿になる、といった具合に必要に応じて使い分けることができます。

この結果、利用者を長時間飽きさせずに画面に集中させることが可能となります。

現在、このアバター介護士は実証実験期間中で、今後は高齢者がより認識しやすい声のトーンや外見などのアバターの開発を進めていくそうです。

将来的には外部の高齢者施設や障害者施設への販売も検討しているとのことですから、普及すれば介護業界での働き方改革・人材獲得戦略の変化にもつながりそうです。


介護の三ツ星コンシェルジュ

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