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「介護記録は手書き」が27% 進まぬICT化の考えられる「意外なこと」とは?

人材不足解消などを目的に、介護業務のICT化の必要性が叫ばれるようになって久しいです。

2024年度の介護報酬改定でも各種加算などでそれが明確に示されました。
しかし、実際にはまだまだ介護事業所のICT化は進んでいないようです。

 例えば、介護記録アプリケーションの開発・運営を手掛ける会社が6月に全国の介護事業所に勤める1015人を対象に実施した調査では、27.0%が「介護記録は手書き」と回答しています。

また、人事労務管理システム会社が福祉関連企業の人事・総務担当者124名を対象に7月に実施した調査では、「介護職員処遇改善手当の算出をExcel・手計算で行っている」と回答した人が24.2%に達しました。

給与計算ですら、10.0%がExcel・手計算だそうです。

 このように、介護事業者のICT化がなかなか進まない原因として、これまでは「中小・零細企業が多く、機器やシステム導入の予算がない」「Wi-Fiなど業務ICT化に必要な環境が整っていない」「従業員の平均年齢が高く、ICTに対する苦手意識・拒否反応が強い」「機器の使い方などを指導できる人材がいない、指導する時間がない」などが指摘されてきました。

しかし、本当にそれだけが理由でしょうか?

例えば、介護は届出や請求関連、運営指導(旧:実地指導)など様々な面で自治体との結びつきが強い業界です。

その自治体自身がICT化に消極的な姿勢であり「紙での提出物以外は受け付けない」などと指導してくることに影響されてしまっている、ということは考えられないでしょうか?

2025年度中に介護サービス事業所の指定や更新に関する申請がオンライン化されることになっています。

厚生労働省で全国1788の自治体にその対応状況についてヒアリングしたところ、「すでに対応済み、または2024年中に対応完了予定」と回答した自治体は約1000だったそうです。

それ以外の自治体に対応が進まない理由を尋ねたたところ「予算・人手・時間が不足している」に加え「現在の申請件数などはアナログで対応できる範囲の量だから」「他の自治体の動向を見極めてから判断したい」など、対応しない理由としては根拠に乏しいものが少なからずあったそうです。

 このように、自治体自体が何かと理由をつけて業務のICT化を実施していません。

こうした状況で「介護事業者だけが先行してICT化を進めても、結果としては業務の効率化にはつながらないのではないか」との考えが強くなっているのかもしれません。

 ちなみに、ヒアリングを行った厚生労働省の担当者によると「市区町村レベルで見た場合には業務のICT化にかなり熱心に取り組んでいるところがある。

しかし都道府県レベルになると『県内各市区町村のバランスを取らなくてはいけない』という意識がはたらくのか、考え方や動きが鈍くなる傾向がみられる」ということです。

日本は本格的な人口減少社会に突入しています。

特に地方では、高齢者人口も急速に減少しており、特別養護老人ホームですら空室に悩んでいるところがあります。

こうした中では、利用者の確保、働く人たちの確保という両面から「どこの自治体で事業所を開設するか」というマーケティング戦略が非常に重要になってきています。

それに加えて「自治体のICT化に対する姿勢・考え方が、自分たちとどこまで一致しているか」も、これからは開設地選びに際して重視する点の一つになって来るのではないでしょうか。

介護の三ツ星コンシェルジュ

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