特養の建築費 平米34.2万で過去最高に 1人当たりの床面積は狭くなる傾向
独立行政法人福祉医療機構(WAM)が6月28日に発表した調査結果によると、2023年度のユニット型特別養護老人ホームの平米当たり建築費は34万2000円でした。
全年度比で1万5000円増加し、調査を開始した2008年以降で最も高くなっています。
高齢者施設に限らず、建築費はここ数年上昇を続けています。
理由としては、鉄やコンクリートなどの資材価格の上昇、作業員不足による人件費の上昇が挙げられます。
また、いわゆる「働き方改革」で1日当たりの作業時間が短くなったり、土日の作業ができなくなったりして、工事期間が長期化していることも理由の一つといえるでしょう。
こうした、建築費の影響は高齢者住宅運営事業者にどの様な影響を及ぼしているのでしょうか。
西日本の地方都市(県庁所在地など)を中心に、高齢者住宅を約30棟運営する介護事業者が、近年では関西での開設に注力しています。
特に昨年7月に兵庫県西宮市で新設して以降は、計画中の案件も含めて6棟連続で大阪・兵庫・京都での開設となっています。
その理由について「建築費の高騰はどうしても入居費用の設定に影響します。『ある程度の入居一時金がとれるエリアでないと、開設できない』というのが現実です」とこの事業者ではコメントします。
現在は西日本限定での展開ですが、高額の入居費用の設定が可能な首都圏への進出も視野に入れているそうです。
このように「建築費の上昇をカバーできるだけの入居費用設定が可能なエリア」を選んで開設する事業者が増えれば、いわゆる「富裕層」と呼ばれる人たちが住むエリアにばかり高齢者住宅の供給が進むといういびつな事態が発生することも考えられます。
また、WAMによれば、2023年度のユニット型特養の1人当たりの床面積は46.8平米で前年度に比べて2.9平米減少しています。
首都圏では44.5平米で4.0%の減少となりました。
建築費上昇の影響を抑えるために、建物規模を小さくするなどして対応している結果と思われます。
これに関しては、多くの高齢者住宅では居室面積は最低基準(ないし指針)が設けられていますので、共用部分の面積を縮小して対応した結果だろうと思われます。
食堂や浴室が狭くなれば、介護スタッフが移動したり介助をしたりするのにも支障を来すかもしれません。
また、スタッフの休憩スペースが十分に確保されていなければ、離職の原因にもなります。
結果として介護などのサービス品質が低下する懸念もあります。
このように、建築費の上昇は高齢者住宅の運営者、スタッフ、利用者にもさまざまな形で影響を及ぼしています。
一般に、高齢者住宅の計画から完成までは数年程度を要します。
その期間が長くなればなるほど、建築費の上昇による影響を受けやすくなります。
例えば、最近開業した大阪府内のある住宅型有料老人ホームは、工事の途中で、当初の予算では完成が不可能なことがわかりました。
急遽クラウドファンディングで不足している資金を集めて何とか開業にこぎつけましたが、それでも予定より数ヵ月完成が遅れたそうです。
このホームの運営者は30代と若いこともあり、SNSなどを通じた資金調達にすぐに着手することができました。
しかし、金融機関など昔ながらの資金調達方法しか視野に無い経営者でしたら、完成をさらに遅らせるか、建物の仕様を大幅に見直さなければならなかったかもしれません。
WAMでも「建築費が高い状態は、今後もしばらく続く」と分析しています。
開設する側は、そうした点を十分に踏まえた事業計画が必要になるでしょう。
介護の三ツ星コンシェルジュ


