見学から入居に至る確率は平均30% この引き上げのために何が必要か
ある大手の高齢者住宅入居相談事業者によると、ホームを見学した人が実際の入居に至る割合は、平均して約30%程度とのことです。
見学に足を運ぶのは、本人ないし家族が、入居相談事業者からの説明でそのホームに何らかの好印象を持ったからです。しかし、それでも3件に2件は入居に至らないという現実を考えると、実際に見学をしてみたら「パンフレットやホームページでは良いと思っていた点が、それほどではなかった」「良いと思っていた点以上に悪い点が新たに見つかった」といったケースが多いのではないでしょうか。
見学の受け入れは、まだまだ新型コロナ感染予防対策を緩めることが難しいホームにとってはリスクがあるのも事実です。
また、見学の時間帯によっては食事の用意など費用面での負担も発生します。それにも関わらず入居に繋がらないのでは経営面での影響も少なくありません。平均30%の成約率を少しでも上げていくことが重要になります。
ちなみに、この入居相談事業者が付き合いのあるホーム運営者の中で、最も成約率が高い会社では実に見学者の70%が成約に至るそうです。その理由について、入居相談事業者は「当社相談員との関係性の良さ」を挙げます。一見すると抽象的な表現ですが、かなり的を射た言葉ではないでしょうか。
入居検討者と最初に接するのは入居相談事業者です。そしてそこの相談員は、検討者が「ホーム選びで重視していること」、逆に「あまり気にしないこと」、そして「入居に際してネックになること」などを細かくヒアリングしています。
それらのニーズに基づいて、多くのホームの中から候補をピックアップします(中には紹介料の多寡だけで判断をする、不誠実な入居相談事業者や相談員もいるかもしれませんが…)。
そして、ホームに見学の申し込みをする訳ですが、ホームと相談員との間に十分な関係性が築けていないと、相談員からの「今度の見学者は、○○の点を特に重視している」「そちらのホームの□□が気に入ったようだ」「▲▲の部分を不安に感じているらしい」などの細かい情報がきちんと伝わらない危険性があります。
結果として、見学時にしっかり説明を聞きたいと思っていた部分を端折られたり、逆に興味がない部分を延々と説明されたりして、悪印象を持ってしまうことになることが考えられます。
ホームと相談員との間で関係性が十分に築けており、細かい情報が事前に伝わっていれば、普段とは見学ルートを変えてみたり、本来であれば施設長が対応する部分を敢えて若いスタッフにさせたり、提供する飲み物を変えたりなど、見学者に「刺さる」工夫をすることも可能になります。
また、同じ入居相談事業者でも、相談員に1人ひとりの「好み」「クセ」のような物があります。例えば、この入居相談事業者ではありませんが、ある相談員は、浴室内に清掃用のブラシやモップなどが立てかけられたまま放置してあるのを極端に嫌うそうです。
この相談員が担当しているときに、浴室がこんな状態になっていたら、見学後の車の中で、相談員の方から「今、見学したホームは整理整頓ができていないので止めておきましょう」とNGが出される可能性もあります。
他にもスタッフのマナーや挨拶・身だしなみにうるさかったり、館内の臭いや温度に敏感だったりする相談員もいます。
「今回、見学同行する相談員は、ホームのどの部分をよくチェックするのか」などといった点まで、過去の経験やデータなどを元に分析し、予め準備をしておくことが見学から入居へ繋がる確率を上げることになるのではないでしょうか。
介護の三ツ星コンシェルジュ