利用者や家族からのハラスメント 半数が経験 看護師はセクハラ、介護職は直接暴力の被害
前回に引き続き、公益財団法人介護労働安定センターが7月10日に発表した「令和5年度 介護労働者の就業実態と就業意識調査」の結果から、介護現場で働く人たちの意識などについて詳しく分析しましょう。
今回は「職場でのハラスメント」がテーマです。
まず「過去1年間で、職場内で上司や同僚などからハラスメントを受けた経験があるか」の問いに対しては、「ない」が75.1%と多数を占めました。
セクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどを無くそうという意識や、それに向けた具体的な取り組みが介護業界内外を問わず広がっており、それが一定の効果を見せていると言えそうです。
ハラスメントを受けたという人に、その内容を複数回答で答えてもらったところ、最も多かったのは「脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言」などといった精神的なパワーハラスメントでした。
2位は「業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことの強制、仕事の妨害」です。
営業会社などでは、こうした過剰なノルマが設定され、上司などからプレッシャーをかけられる話はよくあります。
介護事業者でもこうした話が出てくるのは、近年はライバル施設の増加に加え、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、入居率や利益率の低下に悩む介護事業所が増えている結果とも考えられます。
また、営業会社であれば、厳しいノルマに対して高い歩合給という「リターン」があることも多いですし、そこの従業員の中には「リターンがあるのであれば、多少仕事の環境は厳しくてもいい」と考える人もいるでしょう。
それに対して、介護事業者にはそうした考えの従業員は多くはないと思われます。
「パワハラを受けた」と感じるケースも多いのではないでしょうか。
3位は「私的なことに過度に立ち入ること」。
コミュニケーションを取ろうとした結果、無意識に行ってしまうことが多いので注意が必要です。
4位は「隔離・仲間外し・無視」でした。
次に「利用者や利用者家族からのハラスメント」に関する回答を見て見ましょう。
「受けたことがない」は51.1%であり、職場内でのハラスメントに比べて20ポイント以上低くなっています。
これについては、介護事業者やスタッフに「利用者はお客様なので、多少の無理難題を言われても我慢して受け入れるべき」という考えがあり、ハラスメントを放置してしまっている実態もあると思われます。
ハラスメントを受けた人に、その内容を複数回答で応えてもらったところ、最も多いのは「直接的な言葉の暴力」で、以下「介護保険以外のサービスの要求」「暴力」「性的嫌がらせ」となりました。
なお、これを職種別に見て見ると、看護師は「性的嫌がらせ」が、介護職員は「暴力」が、訪問介護員やサービス提供責任者、ケアマネジャーは「介護保険外サービスの要求」が他の職種に比べて多いという特徴があります。
また、男女別では「暴力」は男性が被害を受ける割合が高くなっています。
これについては、性格や言動が粗暴な利用者は安全などを考えて男性スタッフが担当することが多いのが理由とも考えられます。
介護事業所は、こうした特性を考えて、スタッフを守る対策を講じていく必要があるでしょう。
また、「無回答」は、今回は5.8%でしたが、2021年では40.6%もあり、この2年で急減しています。
これからも、以前は利用者や家族からハラスメントを受けていても「言い出せない」「ハラスメントとして認識できていない」というスタッフが多かったことが伺えます。
ここ数年で、スタッフを含めた介護事業所側の意識が大きく変わったと言えるのではないでしょうか。
介護の三ツ星コンシェルジュ


