介護現場で起こりやすい食中毒とその原因
こんにちは!「しんぶろぐ〜介護ノート~」を運営しているしん(@shinbloger)です。
簡単に自己紹介させてください。
・15年以上の介護経験がある現役の介護士です。
・介護福祉士と福祉用具専門相談員の資格を持っています。
・認知症デイの相談員4年以上の経験があります。
食中毒の知識は、介護職に必須です。
正しい知識を持っていないと、介護施設内で食中毒が蔓延するリスクがあります。
この記事では、介護現場で起こりやすい食中毒の紹介と基本的な対策を紹介します。
3分ほどで読める内容になっているのでぜひ最後までお読みください。
介護施設で食中毒は起こりやすい?
厚生労働省が発表した2021年の「原因施設別食中毒発生状況」によると、食中毒は家庭や飲食店で発生することが多いです。具体的には、家庭で106件、飲食店などで565件発生しています。
参考:食中毒 - 統計資料, 厚生労働省|厚生労働省 (mhlw.go.jp)2024.06.24使用
事業場での発生件数は31件で、これは全体で3位です。
事業場には保育所、寄宿舎、老人ホームなどの介護施設が含まれており、その中でもっとも食中毒の件数が多いのは老人ホームです。
老人ホームでの食中毒発生割合は全体から考えると2.4%ほどですが、事業場の件数だけで見ると約55%を占めています。
このデータから、老人ホームや介護施設などの高齢者施設では、食中毒が発生しやすいことがわかります。
僕も施設内でノロウィルスが発生し、大変な思いをした経験があります。
利用者様が昼食中に嘔吐して、その処理をした職員3人がノロウィルスに感染しました。
介護施設で発生しやすい食中毒の種類
介護施設で発生しやすい食中毒は以下のとおりです。
・ウエルシュ菌
・ノロウィルス
・黄色ブドウ球菌
●ウエルシュ菌
ウエルシュ菌は、土や水の中、健康な人や動物の腸内など自然界に幅広く生息している細菌です。
特に牛・鶏・魚が保菌していることが多く注意が必要。
料理では、カレーや煮魚、野菜スープなどの煮込み料理が原因になることが多いです。
菌の特徴としては、酸素(空気)がないところでも増殖する能力があります。
また、100℃で6時間の加熱にも耐える"芽胞"を形成します。ウエルシュ菌による食中毒の症状は、水溶性の下痢や軽い腹痛が主です。
2016年に大阪の高齢者福祉施設で発生した事例では、鶏と根菜の煮物からウエルシュ菌が検出され、利用者95人が下痢などの食中毒症状を発症しました。
原因は、調理してから喫食までに時間がかかったことです。
加熱調理終了から配膳までの1時間50分の間は室温で保管され、その後温冷配膳車内で1時間ほど加温されていました。
●ノロウィルス
ノロウイルスは、秋から冬にかけて発生しやすく、感染力が非常に強いのが特徴。
主に、ノロウイルスに汚染された二枚貝などの食品をしっかり加熱しないまま食べたり、井戸水を飲んだりすることで感染します。
また、ノロウイルス感染者の手や唾液、嘔吐物などから二次感染するケースも多いです。
ノロウイルスの感染を防ぐためには、食品の中心部までしっかり加熱すること。
ノロウイルス感染者の看病を行う場合は、汚物処理後に手洗いや消毒を徹底してください。
2003年に東京の高齢者福祉施設で発生した事例では、3施設にまたがって感染者が出る事態となりました。
初発患者の感染源は不明でしたが、発症者が約250人にまで広がった原因は、ヒトからヒトへの接触感染であると結論づけられました。
●黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌は、人の鼻、咽頭、皮膚、毛髪などに存在しており、特に手の傷などの化膿した部位には多数の菌が存在します。この菌は30~37℃の温度帯で活発に増殖します。
黄色ブドウ球菌自体は熱に弱く、十分に加熱すれば死滅します。
しかし、産生された毒素は非常に熱に強く、100℃で30分間の加熱条件でも分解されません。
主な症状は、激しい吐き気や嘔吐で、腹痛や下痢です。
2023年に大分県の介護施設で発生した事例では、利用者と職員の9人が「黄色ブドウ球菌」による食中毒を発症しました。施設内で調理された三色そぼろ丼などから黄色ブドウ球菌が検出されました。
原因は、料理に使われた鶏そぼろが常温で放置されたため、菌が繁殖し食中毒が発生したと考えられます。
食中毒対策「つけない 増やさない やっつける」
食中毒を防ぐための3つの原則は、「つけない」「増やさない」「やっつける」です。
●つけない
手にはさまざまな雑菌が付着しています。
食中毒の原因菌やウイルスを食べ物に付けないために、以下のタイミングでは必ず手洗いをしましょう。
・調理を始める前
・生の肉や魚、卵などを取り扱う前後
・調理の途中でトイレに行ったり、鼻をかんだりした後
・おむつを交換したり、動物に触れたりした後
・食卓につく前
・残った食品を扱う前
また、生の肉や魚などを切ったまな板などの器具から、加熱しないで食べる野菜などへ菌が付着しないように、使用の都度、きれいに洗い、できれば殺菌してください。
●増やさない
細菌の多くは高温多湿な環境で増殖が活発になりますが、10℃以下では増殖がゆっくりとなり、マイナス15℃以下では増殖が停止します。
食べ物に付着した菌を増やさないためには、低温で保存することです。
具体的には、以下のポイントに注意しましょう。
・食品はすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れて、低温で保存する。
・冷蔵庫に入れても細菌はゆっくりと増殖するため、冷蔵庫を過信せず、早めに食べる。
・生ものや調理したものは長時間暖かいところに放置しない。
これらの対策を徹底することで、食中毒の原因となる細菌の増殖を防ぐことができます。
●やっつける
ほとんどの細菌やウイルスは加熱によって死滅するので、肉や魚はもちろん、野菜なども加熱して食べれば安全です。
特に肉料理は中心までよく加熱すること。
目安として、中心部を75℃で1分以上加熱しましょう。
また、ふきんやまな板、包丁などの調理器具にも細菌やウイルスが付着します。
特に肉や魚、卵などを使った後の調理器具は、洗剤でよく洗ってから熱湯をかけて殺菌しましょう。
介護現場で起こりやすい食中毒のまとめ
今回は、介護現場で起こりやすい食中毒の紹介と対策を解説しました。
介護現場で起こりやすい食中毒
・ウエルシュ菌
・ノロウィルス
・黄色ブドウ球菌
食中毒を蔓延させない対策
・つけない
・増やさない
・やっつける
これらの対策を実践すれば、食中毒のリスクを減らせます。
日常的な衛生管理を徹底し、適切な調理と保存をすれば、利用者の健康と安全を守ることができます。
食中毒の予防を徹底し、安全な介護環境を築いていきましょう。
介護の三ツ星コンシェルジュ