介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

ついに政府も防止に向け腰を上げる 多発する「カスハラ」 介護業界の実態は?②

 前回に引き続き、介護・福祉業界の「カスハラ」の実態について見ていきましょう。

 カスハラの正式名称は「カスタマー・ハラスメント」ですから、本来であれば「利用者からのハラスメント」を指すのですが、飲食店や物販店などでは、実際に商品やサービスを購入していない人からのクレームも少なくありません。

例えば「店のBGMが外まで流れてきてうるさい」「店の前の掃除がなっていない」など、ただの通りすがりの人からのクレームがカスハラになる可能性も秘めています。

そして、こうしたクレームは電話やメールなど名前を伏せることができるツールで行われることが多くなります。こうした「顔の見えない関係」であることが、クレームを入れた側をヒートアップさせやすく、店側も効果的な対応策をとりくにい一因になっていると考えられます。

それに対して介護・福祉事業所は不特定多数の人の出入りが少なく、クレームを入れて来るのは利用者かその家族が大半と思われます。

では「顔の見える関係だから、解決が容易か」と言えば決してそうではありません。

 家族は日頃は施設にいないのですから、家族からサービス品質などについてクレームが入った場合は、利用者本人が家族に何らかの訴えをしたと考えられます。

しかし、利用者が自分の状況を正しく判断し、それを正確に家族に伝えているという保証はありません。勘違いや嘘に基づき「施設でひどい扱いを受けている」と訴えているかもしれません。

 しかし、家族にとっては「利用者本人が言っていることが全て」なのです。
特に利用者が自分の子どもである場合、親は「子どもを守ろう」という本能がはたらきますから、本人の訴えを絶対視し「施設側が100%悪い」という前提で接してきます。

そのため問題がこじれやすいのです。

また、前述したような一般店舗における利用客でもない人からのクレームの場合には、本人が単にストレス解消をしたいことが動機かもしれません。

ですから場合によっては「放置」して自然解消を図ることが最善手の可能性もあります。

しかし、介護・福祉業界の場合は、クレームを入れてくる側に「私の意見や考えを通じて、自分もよく知っているこの事業所を良くしてあげたい」という正義感のようなものがはたらきます。

そのため、事業者側の対応がまずいと、クレームからカスハラに発展する可能性も高くなります。

 カスハラの多発を受けて、企業向けの対策マニュアルの整備なども進んでいます。

しかし、介護・福祉業界は他業界と違う部分も多いため、一般論的な対策マニュアルでは火に油を注ぐ結果にもなりかねませんので注意が必要です。

さて、先ほど「介護・福祉業界は不特定多数の利用者を相手にしていないので、顔の見えないクレームは少ない」と書きましたが、実際にはこんな事例もあります。

 ある介護事業者では、自社の女性社員たちでアイドルユニットを組みました。

「若い世代に介護の仕事の魅力をPRしたい」というのが狙いです。

しかし、このことに「あんなチャラチャラした人たちに、介護されたくない」と匿名のクレーム電話が入りました。

さて、これに対し、この事業者はどう対応したでしょうか?

 「今は措置の時代ではありません。介護事業者を自由に選ぶことができます。うちの社員の介護を受けたくないのならば、ほかの事業所を利用して下さい」と返したそうです。

 一概には言えませんが、介護・福祉事業者は「外部から悪い評価を受けないようにしよう」という意識が必要以上に強いと感じることもあります。

いわれのないクレームや要求に対しては毅然とした対応をすることも必要なのではないでしょうか。

介護の三ツ星コンシェルジュ

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