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ついに政府も防止に向け腰を上げる 多発する「カスハラ」 介護業界の実態は?①

 最近では「セクハラ」「パワハラ」に続く言葉として「スメハラ」「マタハラ」「アルハラ」などのさまざまな「○○ハラ」が登場していますが、それらの中で最も定着したと言えるのが「カスハラ(カスタマー・ハラスメント)」ではないでしょうか。

飲食や物販などのサービス業界を中心に、客が従業員に威圧的な態度をとったり、ときには直接的な暴力行為に及んだりすることが大きな社会問題になっており、ついに政府もその対策に乗り出しました。

そこで、介護・福祉事業者にも決して無関係ではないカスハラの実態や対応策について2回にわたって紹介していきます。

近年、カスハラが増加している背景には、消費者の意識の変化に加えてSNSの急速な普及もあるのではないでしょうか。

つまり、消費者は「店員にこんなひどい対応をされた」などの情報を(それが事実であるかどうかに関わらず)気軽にSNSに投稿できます。

これは商品やサービスを提供する側にとっては信用に関わる大問題です。このため、SNSに「報復投稿」されることを恐れてクレームなどに対して強く対応することが難しいという現実があります。

結果として、消費者がますます強硬な態度に出ることになります。

介護・福祉業界においても、利用者や家族がスタッフに過剰な要求を執拗に行うといったことは以前からみられました。

しかし、一般業界のカスハラと介護・福祉業界のそれは、多少様相が違うようです。

 例えば、カスハラが起こる原因のひとつとして、消費者の無知や勘違い、サービス提供側との認識の相違などが挙げられます。当然、これらについては消費者が正しい情報や知識を持つことによってある程度は防げます。

飲食店やコンビニエンスストア、スーパーマーケット、公共交通機関などはほとんどの消費者が日常的に利用しているもので、前述したような知識不足や認識の相違などは比較的起こりにくいと言えます。

 それに対し、介護・福祉サービスは「初めて利用する」という消費者が多く、その仕組みや内容、習慣などについて十分な情報・知識を持ち合わせていないケースがほとんどです。

このために認識の違いなどが原因でクレーム等が起こりやすいと言えます。

 先日、あるニュース検索サイトを見ていたら「老人ホームを退居することになったら驚愕の事実が…」というタイトルの記事が配信されていました。

しかし、その内容は「有料老人ホームを退去する際に、前払いしていた入居一時金が一部償却されて全額返ってこなかった」という他愛もないものでした。

有料老人ホームに関わる人であれば当たり前のことであり、入居契約時にもきちんと説明されているはずなのですが、一般の消費者にとっては、ときには実際に有料老人ホームに入居済みの人にとっても「知らなかった」「初めて聞いた」という話なのです。

当然、それによるトラブルなどが多発することは十分に考えられます。

 しかも、最近ではニュース検索サイトに配信されているニュースも閲覧数を増やすことが目的なのか「驚愕の事実」などとことさらに煽ったタイトルをつけ、「有料老人ホームは高齢者を食い物にする悪い存在だ」という印象を見た人に植え付けかねないものが増えています。

 こうしたところで情報を得た消費者が「介護事業者には絶対に騙されないぞ。何かあったら負けずにガツンと言ってやろう」と「身構えて」いる可能性は十分にあります。

つまり当初からカスハラにつながるような火種を抱えて利用する人がいることになります。

次回のコラムでも、カスハラをめぐる介護・福祉業界の特殊な事情について検証してみます。

介護の三ツ星コンシェルジュ

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