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ケアマネの「何でも屋」化が深刻 厚労省主催で対策会議スタート

「ケアマネジャーは『何でも屋』なのか」という議論が、ネット上などで盛り上がりを見せています。

今年4月15日、厚生労働省が「ケアマネジメントに関わる諸問題に関する検討会」を初開催し、現在までに2回の会合を重ねていますが、その主要テーマが「ケアマネジャー(以下:ケアマネ)の業務範囲の明確化」であったことが、こうした議論に火をつけた形になりました。

ケアマネは、殆どの要介護者やその家族にとって初めて接する介護の専門家であることに加え、利用者・家族の身体状況や経済状況など、プライバシーに関わる部分まで知りうる立場にあります。

そうしたことから、利用者や家族からは何かと頼りにされ、さまざまな相談が寄せられることになります。
それらの中には、ケアマネの業務の範疇を超えたもの、例えば「寂しいので話し相手になってもらいたい」「次にうちに来るときに、買い物をしてきて欲しい」などもあります。

もちろん、これらの要求についてケアマネは「業務外だから」と拒否することができます。

しかし、ケアマネに限らず介護業界で働く人たちの中には「困った人を放置しておけない」という性格の人が多くいます。業務範囲外でも、例え1円の収入にならなくても応じてしまうことも少なくないでしょう。

その結果として、何が起こるでしょうか。

範囲外の業務をまで行ってくれるケアマネについては「○○さんは、私たちの困りごとに何でも対応してくれる」という良い評判がたち、業務範囲に厳格なケアマネについては「不親切だ」「融通が利かない」という悪評がたってしまうことになります。

それを避けるために、結果としてケアマネが本来の業務範囲外の雑務をこなさざるを得ないケースが増えてきていると考えられます。まさしく、ケアマネの「何でも屋」化です。

近年、ケアマネ試験の受験者数が減少傾向にある、居宅介護支援事業所の数が減少しているなど、ケアマネとして働くことを望む人が少なくなっていることが指摘されています。

この背景には、これまで述べて来たように、ケアマネとしての仕事の範囲がなし崩し的に拡大しており、労務負担が大きくなっていることが挙げられます。

また、ここ数年で各種加算や事業者独自の賃上げなどで介護現場職の処遇改善が急速に進んだことで、介護職の給与がケアマネのそれを上回るケースが増えています。

介護職にとって難しい試験を受けてまでケアマネになる「うま味」が少なくなっていることも原因といえるでしょう。
さらに、ケアマネとして働く人の平均年齢も上がっていることから、将来ケアマネが不足することも懸念されています。

今回スタートした厚生労働省の検討会は、こうした現状を解決することを目指すものです。

会合では「寄せられたケアマネの業務外のニーズへの対応については『地域課題』として認識し、関係者全員で共有していく必要性がある」との考え方が示されました。

しかし、参加者からは「業務範囲外の相談などについては、地域に『つなぐ先』がないのが現実」という意見もでるなど、問題の解決は簡単には行きそうにもありません。

ケアマネは介護保険制度の根幹をなすものです。

十分なケアマネの数が確保され、利用者や家族にとって質の高いサービスが提供される体制を維持していくためには、利用者や家族を含む関係者全員がケアマネの業務内容についてしっかりと理解し、正しく付き合っていく必要があります。

それと同時に、ICT機器の活用などでケアマネがより業務を効率的に行える環境の整備も重要になると言えるでしょう。

介護の三ツ星コンシェルジュ

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