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要介護者専門ホームでも飲酒・喫煙自由 スタッフ採用面でも大きな効果

 先日、大阪のある有料老人ホームを見学しました。
自立者向けのホームではないのですが、入居者の「生活の自由度高いこと」に驚きました。

 まず、21時から6時までの間は防犯上玄関を施錠していますが、それ以外は常時解放されています。
入居者も「何時ごろ帰る予定」ということをスタッフに告げれば、行き先を告げずに自由に外出できます。

通院帰りに食事や買い物などをして当初告げていた帰宅予定時間を大幅に超過してしまう入居者もいるそうですが、特に問題視はしていません。

 外からの訪問も自由です。
私が見学した日には、近所の女の子2人がホームの中で遊んでいました。スタッフの子どもでも、入居者の孫でもありません。

「今日は雨で、公園で遊べないので遊びに来たのでしょう。周囲に迷惑をかけなければ自由に遊びに来てもらって構いません。
彼女たちはよく来ますが、今ではホームの掃除を手伝ってくれたりします」と運営者では気に留める様子もありませんでした。

 入居者の飲酒や喫煙、間食なども全くの自由です(火災防止の観点から、居室内での電子タバコ以外の喫煙は禁止しています)

もちろん、中には医師から「お酒や甘いものは控えた方がいい」と言われている入居者もいますが、スタッフが制限・禁止することはありません。
「入居者の自由にした方が『今日はそろそろこの辺で…』と自分の判断でやめてくれます」と運営者は語ります。

なぜ、このホームでは、こうした自由度の高い運営が可能なのでしょうか?

理由は2つあります。

まず、入居対象をパーキンソン病やALSなどの難病患者に特化していることです。
そのためか入居者の平均年齢も若く、現在10名いるうちの3名が50代だそうです。

加えてオープンが2024年1月と最近のこともあり、認知症の入居者がいません。
このため、日々の生活を一から十までホーム側で管理する必要がありません。

 もう一つは家族の理解です。
例えば、入居時に「転倒は必ず起こります。もし、それを完全に防ごうと思ったらベッド上に拘束するしかありません」と説明するそうです。

すると100%の家族は「拘束はやめてほしい」と訴えてきます。
実際に転倒はほぼ毎日のように発生しており、家族にもそれを報告していますが(入居者からは「家族には、自分が転倒したなんて恥ずかしいことを絶対に伝えないで欲しい。もし伝えたら退去する」と言われることも多いそうですが)、転倒についてホームを非難することは無いそうです。

高齢者住宅では、入居者を集めたいばかりに、ついつい「安全・安心な暮らし」というキャッチフレーズを使いがちです。

しかしスタッフや機械が24時間つきっきりで見ていない限り「100%の安心・安全」は実現できませんし、そうしたプライバシーが全くない生活は入居者も望んでいないでしょう。

「高齢者住宅での生活にも様々なリスクがある」ことは明白ですし、それについては入居者・家族・運営者が共通で認識し、許容していく必要があるのではないでしょうか。

ちなみに、このホームではスタッフの募集時にも「『リスクがある、とわかると思考が止まる人』や『入居者を管理したがる人』は、当ホームに向いていないので応募しないでください」と明記しています。

人手不足の中では、採用の門戸はなるべく多くの人に開くのが鉄則といえます。
それから考えると真逆の手法とも言えますが「入社後のミスマッチを減らせますし、『こうした考えの介護事業所で勤務したかった』という人が積極的に応募してくれるので、スタッフの採用については苦労していません」とメリットが多いそうです。

介護の三ツ星コンシェルジュ

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