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現役介護士が介護現場で学んだ高齢者とのコミュニケーションのコツ

こんにちは!「しんぶろぐ〜介護ノート~」を運営しているしん(@shinbloger)です。
簡単に自己紹介させてください。

・13年以上の介護経験がある現役の介護士です。
・介護福祉士と福祉用具専門相談員の資格を持っています。
・認知症デイの相談員4年以上の経験があります。

介護の現場には様々な業務がありますが、高齢者とのコミュニケーションは特に繊細であり、細心の注意を要します。

13年以上介護職を務めてきた僕は、認知症や様々な疾患を持った高齢者とのやりとりの中で、いくつかの重要なコミュニケーションのコツを身に付けてきました。

今回は、同じ道を歩む介護職の皆様に向けて、私の知見を共有します。

真の意図を理解する

コツ1: 聴くことの大切さ
介護の現場で、僕たちが最も大切にしていることの一つに「聴く」という行為があります。ただ耳を傾けるだけではなく、その人の話に深く耳を傾け、理解を深めることが重要です。


【体験談】
Aさんは、僕が担当する施設のご利用者で、彼女は認知症の初期症状に苦しんでいました。Aさんはしばしば同じ話を繰り返し、その度に彼女の眉間には苛立ちのしわが刻まれていました。

彼女は自分の言葉が理解されていないと感じていたのです。僕はAさんの隣に座り、彼女の手を優しく握りながら、目を見て「ゆっくりお話ししてください、私は聞いていますよ」と言いました。

ある日のこと、彼女が若い頃好きでやっていた庭仕事の話をしているとき、僕はただ聞くだけでなく、彼女の話に色を加えるよう質問をしました。「その庭にはどんな花が咲いていましたか?」「どんな香りがしましたか?」と尋ねることで、Aさんは自分の記憶をもっと具体的に表現し始め、話すことにもっと喜びを感じるようになりました。

僕たちの会話は次第に豊かなものになり、彼女の表情も明るくなっていきました。

この経験から、僕は聴くことの真の重要性を学びました。それは、ただ言葉を拾い上げることではなく、その人の話に共感し、関心を持って受け止めることです。Aさんの目に再び輝きが戻った時、僕は深い満足感を得ました。
それは介護職として人の心に寄り添うことの大切さを再認識させてくれる、貴重な瞬間でした。

コツ2: 繰り返し確認する
高齢者とのコミュニケーションでは、繰り返し確認することが非常に重要です。
特に認知症を患っている方や、聴覚・発語に障害をお持ちの方とのコミュニケーションにおいて、このアプローチは理解を深め、誤解を防ぐために不可欠です。

【体験談】
Bさんには言語障害があり、彼女は食事の好みや日々の活動についてスタッフに伝えたいことがあるのですが、言葉がうまく出てこないためにその願いが理解されていない、届いていないと不安に感じていました。

ある朝のことです。
Bさんが何かおっしゃろうとしているのを見て、僕は彼女の目を見つめ、ゆっくりと「朝食に食べたいものがあるんですか?」と尋ねました。彼女が何か言葉を試みており、僕は「トーストがいい?それともお粥がいい?」と選択肢を提示し、彼女の反応をじっと見守りました。Aさんが軽く頷いたとき、僕は「お粥がいいんですね?」と繰り返し確認しました。彼女が再び頷くと、安堵の表情を浮かべました。

この小さな交流から、僕は繰り返し確認することで、Bさんの小さなニーズにも応えることができるという実感を得ました。
また、Bさんにとっても、自分の意志が正確に伝わったと感じることで、自己効力感と満足感を得ることができるということを学びました。

忍耐と柔軟性

コツ3: 個々のペースを尊重する
高齢者は若い人と比べて反応が遅かったり、処理速度が異なることがあります。僕は常に彼らのペースに合わせるよう心がけています。忍耐強く待つことで、彼らの自尊心を保ち、自分の言葉で表現する機会を与えます。

コツ4: 柔軟なアプローチを取る
状況によっては、コミュニケーションの方法を変える必要があります。認知症のある方にはシンプルな言葉遣いやジェスチャーを用い、聴覚に障害がある方には視覚的な手段を使うなど、柔軟なアプローチが求められます。

【体験談】
Cさんは、軽度の認知症を患っており、日々のルーティンや簡単なタスクを覚えるのに苦労していました。彼女は特に洋服を選ぶことに困っており、選択肢が多すぎると決められずにイライラしていました。クローゼットの前で立ち尽くし、途方に暮れたような表情をしていることが多かったのです。

僕はCさんに合ったアプローチを見つけるべく、まずは彼女の好みや過去の習慣をじっくりと観察しました。そして、彼女が以前はどのようなスタイルを好んでいたかを基に、選択肢を2つに絞ることにしました。それを彼女の目の前に並べ、「どれが今日の気分に合うかな?」と優しく問いかけました。

最初は迷っていたCさんでしたが、数回の試みの後、自分で一つを選ぶことができるようになりました。選択肢が少なくなったことで決断がしやすくなったようで、彼女は自分の判断に自信を持つようになりました。着る服を自分で選べるようになったCさんは、その日一日、より活動的で明るく過ごされていました。

この経験から、柔軟なアプローチの重要性を学びました。個々の高齢者に合わせたサポートを提供することで、彼らが自立性を保ちながら、毎日の生活に充実感を感じることができるのです。また、その小さな成功体験が、彼らの自己肯定感を高め、日々の生活の質を向上させることにつながります。

絶えず学び、適応する

コツ5: 継続的な学び
高齢者とのコミュニケーションは一朝一夕にはマスターできるものではありません。僕は研修やセミナーへの参加、最新の介護技術やコミュニケーション方法について常に学んでいます。これは、より効果的な関わりを提供するために欠かせないプロセスです。

コツ6: 個別性を認める
高齢者一人ひとりが独自の性格や過去を持っています。介護職として、それぞれの個性や好みを理解し、それに応じてコミュニケーションを取る柔軟性を持つことが大切です。


これらのコツは、高齢者とのコミュニケーションを円滑にし、より良い介護を提供するために、僕が現場で学んだ、実践的なアドバイスです。介護は単に身体的なサポートを超えた、心からのサービスを提供する仕事です。コミュニケーションを通じて高齢者の方々の人生に豊かさをもたらすことは、介護職の大きな喜びであり、僕たちの使命です。

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