介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

多くの仕事が「成果型」ビジネス。介護現場にこのスキームは馴染むのか?

 先日、介護業界関係者と「介護の仕事は『時間型』『成果型』のどちらであるべきか」について議論する機会がありました。

 「時間型」とは、予め決められた一定時間働く仕事で、マッサージやエステなどが挙げられます。時間給のアルバイトやパートもそうでしょう。一方で「成果型」はモノづくりの仕事などが挙げられます。例えば建設会社は建物を完成させて引き渡すことで初めてお金になります。
もちろん納期は予め定められていますが、何らかの理由でそれをオーバーしても、完成するまで仕事は続けます。

 現在の介護保険制度では「サボった者勝ち」になりかねません。

 現在の介護保険制度では、「訪問介護の生活援助20分以上45分未満」など、サービスを提供した時間によって報酬が定められています。
しかし、実際には訪問ヘルパーのスキルには差があります。
決められた業務をケアプランの時間一杯かけてやっと終えられる人もいれば、半分の時間で終わらせられる人もいます。しかし、報酬上はどちらも一緒です。
個人の能力は無視されています。

 また、他人の半分の時間で仕事を終えられるヘルパーの場合、余った時間を利用者との会話などに費やしてより質の高いサービスの提供につなげようと努力するケースもあれば、逆に利用者宅にいながらサボっていることも考えられます。これも報酬上は同一です。
言い方は悪いですが「サボった者勝ち」になりかねません。

 「こうした『一定時間、現場で仕事をしていればいい』という仕組みが、介護職が向上心を持たない一因になっている。もっと成果を介護報酬、介護職の処遇に反映させる仕組みにすべきではないか」と議論に参加した1人は語っていました。

成果を出した介護事業所に対してインセンティブを付与

 では、実際のところ、こうした「成果型」は介護の仕事に馴染むのでしょうか?まず介護における「成果」とはなんでしょうか?前述したようなモノづくりの仕事であれば、作った「モノ」が成果としてはっきり残ります。営業の仕事であれば売り上げという客観的な数値があります。しかし、介護にはそれがありません。

 近年、国や自治体は介護に対して「アウトカム評価」の考え方を打ち出しています。
つまり利用者の要介護度の改善など、一定の成果を出した介護事業所に対してインセンティブを付与するなどです。
しかし、要介護度の改善は本人に関わる多くの人たちの協力・連携の結果であり、特定の介護職個人の「成果」として評価をできるものではありません。

 介護事業所の中には「サンクスカードを多く書いた、もらった」「SNSでの情報発信を積極的に行い、結果として利用や就業に関する問い合わせが増えた」「友人や知人を紹介で数多く入社させた」などの個人的な成果に対し特別手当などを支給しているケースもあります。

しかし、これらは介護報酬とは無関係ですので、その費用は事業所側の負担になります。
水光熱費や食材費などあらゆる価格が上昇傾向にある中で、こうしたことに会社として「ご褒美」を出すというのは難しくなっているのも現実です。

 このように、「チームプレイ」が基本であり「数字や形」で成果を示しにくい介護現場の仕事は「成果型」には馴染にくいといえます。
しかし「一定時間仕事をすればいい」という仕組みであることが、能力の高い人が正当に評価されにくく、モチベーションの低下につながっていることも事実です。何らかの形で成果を評価する仕組みが求められます。


 大阪の中堅介護事業者では、年に1回の全社大会で「最優秀施設長」を選出・表彰してきましたが、前回からそこに「最優秀サービス提供責任者」が加わりました。
このように、より現場に近い人たちにスポットが当たるのは承認欲求を満たし、離職の防止にもつながるのではないでしょうか。

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