介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

コロナ落ち着き、外部講師招いた研修も増加 受講効果を高めるための意外な方法とは

人が人に対してサービスをする介護事業では、スタッフの質が他社との差別化を図る上で非常に重要となります。そのため教育・研修は欠かせません。どこの会社でも介護技術や知識、接遇・マナー、虐待防止、ハラスメント防止など様々な研修を行っていると思います。

 これら研修のスタイルは、社内の人間が講師をするものと、外部から講師を招くものとに大別されます。新型コロナウイルス感染症の状況が深刻なときには、感染防止の観点から外部講師を招くのを休止する介護事業者も多くいましたが、新型コロナが5類になって以降は、その動きも再び活発になっているようです。

 では、こうした教育・研修を行う場合、講師は社内、社外のどちらがいいのでしょうか?

まず、コスト面を考えれば、講師料がかからない社内に軍配が上がります。また、社内の方が講師のスケジュール調整もしやすいでしょう。そして、社内講師は、その会社の経営理念・介護に対する考え方、社内事情、参加者1人ひとりのスキルや性格などをよく把握していますので、よりキメの細かい研修が可能と言えます。それに対して外部講師の場合には、どうしても内容が「一般論」になりがちな点があるのは否めません。

 では、社外講師のメリットとは何でしょうか。まずは「専門性が高いこと」が挙げられます。介護技術などであれば、他人に教えるだけの知識・経験を有するスタッフは社内で自然に育つでしょう。しかし「メンタルヘルス」「モチベーション向上」「法律関係」などの専門知識を持つ人を自身で育成・雇用するのはよほどの大手事業者でもない限りは困難です。

そして大きいのは「伝える力」です。
仮にベテランスタッフが高い介護技術を持っていたとしても、それを他人に分かりやすく伝えるスキルを持っているとは限りません。
参加者を飽きさせず、最後まで意欲を持たせ続ける研修を行えるテクニックはプロならではといえるでしょう。

今年の春から、高齢者住宅を6棟運営する介護事業者が、外部講師を招いて半年間の施設長研修を実施しました。社長は「稼働率の上昇など、大きな成果が見られた」と満足そうでした。

 この研修を開始する前に、講師からは「参加できるのは施設長だけ。それ以外の人、特に本社の役員などは絶対に参加・見学させないでください」と念を押されたそうです。ですので「研修で実際にどんなことが話されているのか社長の私も知らない」とのことです。 外部講師による研修のメリットは、こうした点にあると言えます。

つまり、社内の人間が講師だったり、自分の上役が一緒に参加したりしていると、受講者側の態度や言動が社内で知られるため、「よそ行き」の態度で参加しなくてはなりません。何か質問をしようと思っても「上役に『こんなことも知らなかったのか』と思われたくない」と遠慮してしまうでしょう。自分の仕事について不満や疑問を感じていても、それを口にすることもできません。

つまり研修に参加して知識や技術を学んでも、それが「自分が抱えている悩みや問題点の解決にはならない」というケースも多々あるのです。

しかし、この研修のように「参加者は、外部の講師と、自分と立場が同じ施設長だけ」であれば、互いに自分の悩みや相談事、愚痴、不平不満などを遠慮なく口にできます。

 「研修の内容が良かったということもあるのでしょうが、結果として研修が施設長のいい『ガス抜き』の場になっていたのではないかと思います。ここに定期的に参加することで、モチベーションを維持し、パフォーマンスの向上に繋がったのでしょう」と社長は分析していました。

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