老人ホーム選びの知識

自立型有料老人ホームの選び方22のチェックポイント

有料老人ホームの運営コンサルタントに最も多い依頼は何か?
一番多い相談は、「自立型有料老人ホームの経営の立て直し」だそう。
特に多いのか、入居一時金数千万円という高級有料老人ホーム。

他の介護事業者から見ると入居時に数千万円の入居一時金を頂戴し、なおかつ、入居者の方も自立の方が中心なので人件費等も少なく済むと考えられるので羨ましい限りですが、何故、このような老人ホームが経営に困るのか?

原因は多々ありますが、その原因の多くは以下のとおりです。
・入居者の長生きリスク(開設当初、入居時年齢を75歳程度と想定し、入居一時金の償却年数を15年にしていたが、15年を超えても入居を継続する入居者が多数存在することによる収入減)
・入居者の介護フロアへの住み替え拒否による運営経費(人件費)増(要介護状態になっても、用意していた介護フロアに住み替えて頂けないので、介護人員過多)
・将来リスクの想定不足(自立型有料老人ホームは50年程度の運営期間を想定してい経営計画を立てるが、介護人材不足による人件費増、看取りケアの実施のための人員の想定不足、建物修繕費の想定不足)

このような事態により、経営困難に陥り、身売りするホームが続出しています。
関西でもそれぞれ事情は異なりますが、関西電力、神戸製鋼、オリックス、新日鉄、三菱重工業、京阪電鉄等、名だたる大手事業者もしくはその子会社が運営する自立型の有料老人ホームが身売りを行いました。
大手だから安心、運営会社の経営がしっかりしているから安心というのは、この世界では通用しません。

自立型の有料老人ホームは、自身に子供がいない等家庭の事情で、将来の要介護時に備え、安心・安全のために元気なうちに入居を検討する方々がほとんど。
今回は、元気なうちに入居するための自立型の有料老人ホームの選び方について説明していきます。

経営状況等の確認を行う

まず確認したいのが何といっても経営状態。
有料老人ホームは法律上、運営懇談会の実施を義務付けられています。
過去3年間の運営懇談会の議事録の提示、運営会社の過去3年間のPL、BS、過去3年間の入居率の推移を見せてもらいましょう。
運営懇談会でどんな事を話し合われているのか?、運営会社は過去3年間10%以上の経常利益を計上しているか?、過去3年間入居率が90%以上維持出来ているか?等を確認しましょう。
特に「利益」については大切。大手が運営していればなおさら経営成績にはシビア。3期連続赤字であれば、売却対象になるかもしれません。

また、大手企業が子会社形式で経営している場合は、社長(経営者)の勤務年数、経験等も確認しましょう。
例えば、3年毎に社長が交代している会社、その社長に若手社員を送り込んでいる会社は、本気で入居者のことを考えているとは思えません。少なくとも、10年間は、同一の幹部社員に経営を任せている会社が信頼出来ます。

介護体制

人員上、設備上、看取りケアまで見越したソフト・ハードにしているかも確認したいポイントです。

ソフトについては、24時間看護師常駐体制を敷いているか?、要介護者に対する介護職員の比率が2:1を上回っているか?、専門のリハビリ職員は配置しているか?、施設長は業界経験年数が長く指導力があるか?認知症に対する対応の考え方は信頼できるか?職員の定着率は高いか?、年間の看取り人数?在宅訪問診療医が熱心かどうか?等が確認のポイント。

終の棲家として選択するわけですから、病気になったから、認知症状が進んだからと言って退居を強いられるのは本末転倒。上記のポイントは大切です。重要事項説明書でもチェックしましょう。

ハードについては、要介護状態になっても、出来るだけ自室で過ごせるよう工夫がされているか?がポイント。
例えば、自立フロアに軽介護対応ができるようなスペースが設置されているか?軽介護者向けのプログラム(例えば個別リハビリ、認知症予防、無料居室清掃サービス等)が設けられているか?ICT対応(眠りスキャンの設置等)は進んでいるか?介護フロアはユニットケアもしくはフロアケアになっているか?等を確認しましょう。

見学時のチェックポイント

見学時にチェックして頂きたいのはホームの雰囲気。自分に合っているかを確認することは大切。

チェックポイントとしては、掲示板やエレベータ等に施設の行事についての説明書きが多数掲載してあるか?リハビリルームでは毎日のように軽介護者に対する個別リハビリが提供されているか?サークル活動は活発に行われているかどうか?介護フロアの職員・入居者の表情?年間のイベント実施状況は?、共用トイレ・浴室・事務所の整理整頓状況等を確認してください。
食事に関しては特に大切。毎日3食のことですからパンフレットで見るだけでなく、どんな考え方で食事を提供しているかを施設長に確認することは大切です。

イベントについては「やりすぎていないか」も確認しましょう。
毎週のように外食イベント等を催している高級ホームもありますが、食事代等は参加者負担がほとんど。
想定していた以上に費用がかかるのが自立型有料老人ホームの特長。軍資金がつきて退居せざるを得なかったという経験をされている方も多数います。

また、自立型の高級老人ホームは華やかに見えますが、”入居者同士の陰湿なイジメ"があるホームも少数派ではすが存在します。
"いじめ"に対してホームがどういう対応を行ってくれるのか?過去の経験を正直に施設長が話してくれるのか?の確認も大切。
大金を費やす終の棲家ですから、出来れば1週間ほど体験入居して見るのがよいでしょう。

元気なうちから自分なりの条件を整理して終の棲家を探すのは、ご家族に介護負担をかけないためにも大切なことです。
本サイトでは、独自のチェックポイントで調査した優良なホームを沢山掲載しています。
まずは「経済条件」の整理を行い、上記のチェックポイントを意識しながら体験入居先を選択してください。

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この記事を書いたコラムニスト

荒牧誠也 (アラマキセイヤ)

介護の三ツ星コンシェルジュ編集長

株式会社ベイシス 常務取締役 事業本部長
1964年 大阪府大阪市生まれ
1988年 関西電力㈱入社。介護事業子会社 ㈱かんでんジョイライフや医療関係子会社 ㈱かんでん在宅医療サービスの設立や運営に従事。関西電力グループのメデイカル・ヘルスケア事業の企画業務や㈱京阪ライフサポートのM&Aに従事後退職。
2017年 関西電力㈱を退社。㈱ベイシスの取締役シニア事業部長に就任。

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