大都市では入居者の半分が紹介事業者経由 彼らとの正しい付き合い方とは?
厚生労働省が2020年に実施した調査によると、
首都圏・関西圏の介護付き有料老人ホームの新規入居者の約半数が、
いわゆる「高齢者住宅紹介事業者」(以下:紹介事業者)経由だったそうです。
今や紹介事業者はホーム運営には必要不可欠な存在ですが、それだけに彼らとの上手な付き合い方が求められます。
今回は「良質な紹介事業者の見分け方」「紹介事業者との上手な付き合い方」を解説します。
「決まらなかった理由」を説明してくれるか
高齢者住宅側が紹介事業者に求めるのはただ一つ「自分のホームに合った入居者を紹介してくれること」です。
例えば「本人の残存能力を活かすため必要以上に手を出さない」という方針のホームに、
上げ膳据え膳の対応を期待する人を紹介されたら、入居後にクレームなどのトラブルになりかねません。
短期で退去してしまうだけならまだしも、
退去後に「あそこのホームはサービスが最悪だった」などの悪評を流されかねません。
リスクマネジメントの観点からもミスマッチは防がなくてはなりません。
ミスマッチを防ぐには「紹介事業者(の担当者)が、
どの程度自分のホームについて知っているか」を把握することが重要です。
見学同行時などに「今回は、ほかにどこのホームが候補となっていますか?」とストレートに聞いてみましょう。
このとき自分たちと余りにコンセプトが違うホームの名前が出るようでしたら、
その紹介会社はエリアや価格だけで相談者に薦めていると考えられ、ミスマッチを起こす可能性が高いといえます。こうしたポイントから、紹介事業者の業務姿勢などの質を見極めていきましょう。
また、「紹介をしたが入居契約に至らなかった場合に、その理由をしっかりと伝えてくれる」も良い紹介事業者を見極めるポイントです。
「建物が古い」「日当たりが悪い」「駅から遠い」など物理的にどうしようもない理由はともかく、
「スタッフの元気がない・言葉遣いが悪い」「清掃や整理整頓が行き届いていない」など、
スタッフの努力次第で改善できる欠点を伝えてくれるのは、
そのホームに対する思いがあってのことではないでしょうか。
「キャンペーン」は足許を見られるリスクも
では、紹介事業者と上手に付き合っていくポイントは何でしょうか?
肝心なのは「必要以上に下手に出ず、必要以上に上に立たず」という考え方です。
例えば、一時的に紹介事業者へのフィーを大きく引き上げる「キャンペーン」の実施は、
入居率を引き上げるメリットはありますが、紹介事業者側に足許を見られるデメリットもあります。
「あそこのホームは、もう少し入居率が下がったらキャンペーンを言い出はず」と予想して、
敢えて入居者を紹介せず、キャンペーンが始まったとたんに一気に紹介するなどの行動に出る紹介事業者が出てくることも考えられます。
それを防ぐには「キャンペーンの対象は直近半年間で○件以上の紹介実績のある事業者に限る」などの一定条件を課すことも必要です。
紹介事業は、届出も許認可もいらずに誰でも開業でき、紹介の仕組みやフィーに関する規定もありません。
開業後に指導や研修などを行う業界団体もありません。
そのためにサービスの品質などの面でバラツキが大きいのが現実です。
1年以上も前に見学同行した高齢者が入居をしたと聞きつけて
「初めに紹介したのはウチなのだから、紹介料を払え」と要求してくるといったトラブル事例もあります。
高齢者住宅運営事業者の団体、高齢者住まい事業者団体連合会では紹介事業者自身に法人概要や紹介実績などを届け出てもらい、その情報を公表する制度を2020年に始めました。
現在287の紹介事業者が届出を行っています。
これらの情報を参考にしながら、紹介事業者と上手に付き合っていきましょう。