コンバージョン高齢者施設 コロナ禍で再び増加の兆し

元学校やホテルという施設も

不動産や建築に詳しい人なら「コンバージョン」という言葉を聞いたことがあるでしょう。
これは「建物を別の用途に転用する」という意味で「住宅を宿泊施設に」「オフィスビルをマンションに」「学校を地域のコミュニティセンターに」「倉庫を商業施設に」など様々なケースがあります。
老人ホームなどの高齢者施設に転用されることもあります。
 
例えば、介護付き有料老人ホームの供給が盛んだった2000年代初頭は、
企業が保有する寮や研修施設を転用した物件が多数ありました。

団体旅行の減少で倒産した温泉旅館を転用した老人ホームもあります。
また町の銭湯がデイサービスに転用されるケースもよくありましたし、民家改修型デイは一世を風靡しました。最近ではコンビニエンスストアが機能訓練型デイや障害者向けデイに転用されているケースをよく見かけます。

これまで私が取材した高齢者施設の中にもコンバージョン物件は数多くありましたが、
変わったところでは、パチンコ店などを経営していた資産家の大邸宅やホテル、
学校、遊郭として使われていた建物を改修したものなどがありました。

元遊郭の建物はデイとして活用されていましたが、そうした建物がある地域は、
現在では風俗店舗街のことが多く、このデイも周囲は風俗店舗ばかりでした。

取材は夜遅い時間で、タクシーで行ったのですが、
運転手に大まかな場所とデイの名前を告げたところ「そんな店は無いよ」と言われたことを覚えています。

使用済みオムツの保管場所がない…

さて、こうしたコンバージョン物件は元々高齢者施設用として設計された建物ではないために、
いろいろと不都合も多いようです。

代表的なのはエレベーターです。ストレッチャーが入る大きさのものを元々備えていた建物は殆どありません。

また、廊下の幅が狭くて車椅子どうしですれ違えないというケースもあります。
元々がビジネスホテルや寮の物件の場合には居室面積、とくに水廻りスペースが狭いこともあります。

このため、特定施設の指定を受けることができなかったり、
要支援や軽度要介護の高齢者しか受け入れられなかったりといったケースもあるようです。

また、高齢者施設として運営するのに何の問題のないレベルまで改修した結果として、
新築するのとほぼ同額の費用が掛かってしまった、という本末転倒のケースもあります。

コンバージョン高齢者施設では「臭い」が問題になることもあります。
利用者の使用済みオムツを一時的に保管しておくのに適した部屋が確保できないため、
排泄物の匂いがロビーや食堂にまで漂ってきてしまっている施設がありました。

また廃棄(回収)場所までの専用動線が確保できないため、
使用済みのオムツをビニール袋に入れて1階までエレベーター
(そのエレベーターは入居者や見学者も利用します)で運ばないといけないという施設もありました。
この施設はスタッフ教育が不十分で、そのビニール袋を持ったまま私という外部の人間が乗っているエレベーターに同乗しようとしてきました。

一時期に比べれば、こうしたコンバージョン手法で開設する高齢者施設は減っていますが、
今はコロナによる観光需要、特にインバウンド需要の落ち込みで宿泊施設の経営が深刻な状況です。

またコロナで人気を博したコワーキングスペースも、
テレワーク制度を導入する企業が減ったことで稼働率が低下しています。

こうしたニーズの変化の中で、建物のコンバージョンが増え、
転用後の用途として高齢者施設が選択されることも増えてくるでしょう。

しかし、前述したように、使い勝手などの面で難がある物件になることも考えられます。
運営する側も、入居する側もそのことに留意する必要がありそうです。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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