介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

「想いが強すぎる」人は介護に不向き? 過剰な熱意が引き起こしたトラブル事例

ある介護職向け転職サイトの「こんな人は採用されない」というコラムで、
不採用の理由のひとつに「『想い』が強すぎる」が挙げられていました。
介護は「想い」が大切ですが、強すぎても問題のようです。

今回は、「想い」に関するトラブル事例を集めてみました。

自分の信じる介護手法以外は「邪道」

介護業界には、考え方や技術面で独自の手法を確立した有名人が何人もいます。
その手法は、その人の名前から「○○式介護」「◇◇理論」などと呼ばれています。

地方の介護事業所に一人の女性が中途入社しました。
新卒入社で介護職として東京で6年間勤務。結婚を機に夫の地元に転居しましたが、
そこに元の会社の事業所が無かったため、転職の道を選びました。

元の会社では、そうした「○○式介護」の一つ(以下:A手法)を導入していました。
しかも、その考案者を顧問に迎え入れて直接指導を受けるなど、かなり熱心でした。

しかし、こうした手法はどれも「100%正しい」と言い切れない部分もあります。
A手法も業界内には批判の声もあり、正反対の手法も提唱されていました。
そして転職先は、その正反対の手法を導入していたのです。当然、女性と転職先の間で意見がぶつかりました。

女性は前職時代、「A手法をよく理解し、効果的に活用している」と
発案者から直接激賞された経験がありました。
この経験は彼女にとっては何よりの勲章であり、それが理由で「A手法以外の介護の考えは邪道」という、
「信者」とでもいうべき域にまでなっていました。 

転職先でも何かにつけ「このやり方はおかしい」「A手法では…」と言うだけではなく、
A手法に関する書籍を持ち込み、他のスタッフに勧め始めました。

さらに「地方の介護は遅れている。田舎の人はレベルが低い」などの発言をするようにもなりました。
さすがにこの発言には多くの従業員から反発の声が上がり、
結局女性は自ら会社を去っていかざるを得なくなりました。

「入社前に見抜けなかったのか」という意見もありそうですが、彼女の元勤務先の情報が少なく、
A手法を導入していることがわかりませんでした。

また人手不足で若い経験者は喉から手が出る程欲しいことから採用判断が甘くなった面もありました。

本業そっちのけで「新規事業開拓」

介護者事業者の営業職募集にある男性が応募してきました。
40代で営業一筋。介護業界は未経験なのと短期間で転職を繰り返しているのが気になりましたが
「必ず会社を大きくします」という熱意を評価し採用しました。

彼は非常に仕事熱心で、昼間はずっと外回り、夜は介護業界の会合に積極的に顔を出すだけでなく、
休日も本などで介護事業や業界について勉強をしていました。

ところが、その割には新規利用者の獲得という「実績」が伴いません。
それでも社長は「彼は介護業界未経験。今は種まきの時期」と大目に見ていました。

しかし、そのうち、彼が様々な商材の資料を持ち帰り
「新規事業として販売代理店になったらどうでしょう。セールスは私が担当します」
と社長に提案する様になったのです。

彼は介護の営業は全く行わず、副業のネタ探しに飛び回っていたのでした。

その理由を問いただすと、「介護業界について勉強した結果、今後介護報酬は上がらないと判断した。
介護だけでは会社に未来はない。早く第2の柱を作るべき」と主張しました。

確かに、一理あります。しかし、それは社長が判断することです。
そもそも新規事業開発のために彼は雇われたのではありません。

結局、彼には3ヵ月で退職してもらいました。
「会社を大きくしたい」という想いばかりが強すぎて、自分の役割を判断できなかったのでしょう。

「短期間で転職を繰り返したのは、どこの会社でも同じようなことをしていたのでは」
と社長は語っていました。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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